誰でもテキストを入力するだけで動画が作れる時代がやってきた。OpenAIが2025年9月30日にリリースした「Sora 2」は、単なる動画生成ツールの域を超え、「物理シミュレーター」とでも呼ぶべき革新的なAIだ。リリースから約2週間、世界中のクリエイターたちが発見した「意外な使い方」を紹介していこう。
音声も自動生成、これが最大の武器
Sora 2が他の動画生成AIと一線を画すのは、映像と完全に同期した音声をネイティブ生成できる点だ。Google「Veo 3」も同様の機能を持つが、Sora 2は物理シミュレーションとの組み合わせで、より没入感のある映像体験を実現している。セリフのリップシンク、効果音、環境音をすべて自動で作ってくれるのだ。
例えば「デリーの屋台でゴリラが巨大な中華鍋でバナナを使って焼きそばを作っている」というプロンプトを入れると、ゴリラの毛並みの質感から動き、さらには鍋をジャージャー振る音、周囲の喧騒まで再現される。まるで本物のドキュメンタリー映像のような仕上がりだ。
プロンプトはLLMに作ってもらうのが正解
ここで重要なポイントを一つ。Sora 2で質の高い動画を作るには、詳細な英語プロンプトが必要だが、実は自分で英語を書く必要はない。この記事で紹介するプロンプトも、実はすべてChatGPTなどのLLMに作ってもらったものだ。具体的には以下のように依頼している。
プロンプト:デリーの屋台でゴリラが中華鍋でバナナを使って 焼きそばを作っている映像を作りたい。夕暮れ時で、炎が上がるシーンも入れて。ジュージューという音や周囲の喧騒も欲しい。これをSora 2用の詳細な英語プロンプトにして。カメラワーク、照明、音声まで具体的に指定してください
このアプローチには必要となる専門知識がなくても問題ないという大きなメリットがある。たとえば「ミディアムクローズアップ」「被写界深度(depth of field)」といったカメラ用語や、「弾性衝突」「遠心力」といった物理学用語をLLMが適切に補完してくれるからだ。音響デザインについても同様で、環境音、効果音、さらには音の空間的な配置まで詳細に記述してくれる。さらに、プロンプトの長さも50〜100語という最適な範囲に自動調整されるため、自分で語数を気にする必要もないのだ。
実際、海外のクリエイターの間でも「母国語でコンセプトを練る→LLMで英語プロンプトに変換→Sora 2で生成」という3ステップワークフローが主流になりつつある。英語が得意でなくても、想像力さえあれば誰でもプロ級の動画が作れる。これがSora 2時代の新しいクリエイティブワークフローだ。
他にも効果的なプロンプト作成のポイントをまとめておこう:
1. 被写体と設定を明確に:何を、どこで撮るのかをはっきり指定
2. カメラワークを具体的に:アングル、レンズ、動きを映画用語で記述
3. 照明・色調で雰囲気を決める:時間帯、照明の質、カラーパレットを指定
4. 物理的動きを詳細に:Sora 2の強みである物理シミュレーション能力を活かす
5. 音声を細かく指定:環境音、効果音、音楽まで具体的に記述
6. 制約事項も明記:避けたい要素(レンズフレアなど)も指定する
これらの要素を50〜100語程度のプロンプトにまとめると、最も効果的な結果が得られる。シンプルで焦点を絞った、楽しく想像力豊かなプロンプトが成功の鍵だ。
ただし注意したいのは、ここで紹介するプロンプトをそのまま使っても同じ動画が生成されるわけではないということだ。Sora 2は同じプロンプトでも毎回異なるバリエーションを生成する。プロンプトはレシピのようなもの——方向性を示すガイドラインだと考えればいい。
実際、筆者がこれらのプロンプトを試したところ、一発で思い通りの結果が出るとは限らなかった。そんな時は何度か再生成してみる「ガチャ」方式もあるが、より効率的なのは失敗した動画をLLMに見せて、プロンプトを改良してもらう方法だ。「この動画では猫の動きが不自然だった。もっとリアルにするには?」と聞けば、LLMが改良版プロンプトを提案してくれる。こうした試行錯誤も含めて、Sora 2時代のクリエイティブワークフローなのだ。
では、実際のプロンプトおよび生成された画像を見ていこう。うまくいったものもあれば失敗もあるが、ここではすべて1回の生成、いわゆる「ポン出し」した動画だ。動画の後には筆者の一言コメントも記しておいた。
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