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2025年の美容医療 | 美容外科開業医の独り言

美容外科開業医の独り言

美容医療とは人間愛!という信念で仕事をしている美容外科医のブログです。
レーザーなど最新の美容情報や普段の診療で感じたことなど、ぼやきを交えながら書いていきます。
外見だけではなく心も綺麗になり、自信が湧いて幸せになれる、そんな美容医療を目指しています。

今年最初のブログ更新です。

昨年は学会活動などが多すぎて、診療日数が例年より少なくなってしまいました。ご不便をおかけし申し訳ありませんでした。

今年は少し学術活動をセーブしようと考えていますが、すでに幾つか依頼が舞い込んでおり、今年も忙しくなりそうです。この年齢になると、総論的な講演や取りまとめ役の仕事が増えてきて、客観的かつ公平なポジションで好きなように発言できると良いなと思っています。

 

では年の初めということで、昨今の美容医療問題について私個人の考えを書きます。

ここ数年、美容医療業界は参入医師が増加し、一気に飽和してきました。おそらく患者サイドの需要はまだまだ増えていくとは思いますが、ただ単純に美容医療をビジネス的に実践しても上手くいかない時代になりつつあります。技量の差を出せないことも多いレーザー脱毛では価格競争となり、昨年大手チェーンクリニックが倒産したのは記憶に新しいところです。医師の技量や知識関係なくビジネスでうまくいく時代は終焉を迎えつつあります。今はまだ機器や治療材料の新しさで差別化ができますが、それもずっとは続かないでしょう。使う側の「人」や「施設」の他との差別化が必要となるのは明らかです。医師の技量は患者側が推し量れる部分もありますが看護師施術においてはクリニックの信頼性などが重要になるでしょう。これが医師個人の経歴や経験なのか、クリニック自体の知名度、規模感などによるのか、はたまたSNSなどでの見せ方によるものなのかは様々な要因がありますが、何か特徴を出さないといけないでしょう。

 

また最近は「直美」も話題になりました。直美、つまりは初期研修終了後すぐに美容医療の領域に入ってくる医師が増えてきて、地域医療崩壊の一因になるとされています。これを規制しようと厚生労働省側は動いており、様々な規制ができるのは確実です。さらにはトラブルの急増も消費者庁が懸念しており、政府の多方面から規制がかかってくるので、今までのような医師免許さえあれば良いという状況ではなくなるでしょう。

形成外科や皮膚科など基本診療領域の専門医取得が必要かどうかはまだまだ議論が必要ですが、安易な参入はもはや難しい時代となるでしょう。しかし私自身は「直美」だけを取り上げて悪いという論調には賛同できません。直美であっても、その後きちんと医療としての研修を積めば、患者様にとって不利益なことはあまり生じないし、専門医を持っていてもそれにあぐらを書いて全く美容を勉強していない医師よりはるかに高い技量を持つ医師も沢山います。直美に至る動機を議論の対象にするべきではないかと思います。現在の研修制度などを含めた包括的な解決策が重要かなと思っています。

また様々な診療科から諸般の事情で美容医療に参入する医師も多くいます。基本診療科の専門医を取得する重要性はあるものの、必要条件ではないでしょう。それより医師のセカンドキャリアをもっと考える時代になっているのではないでしょうか。今の研修制度は、一度研修コースから外れると戻るのは体力的にも時間的にも大変なのです。時間外診療や急変の少ない美容医療はその受け皿になっている一面があります。

 

美容医療に関わる医師の倫理も昨年は問題になりました。解剖研修での不適切なSNS投稿が話題となり、形成外科学会は、倫理的に許されない、それに関わった医師を調査するとまで声明文を出しました。

それゆえに形成外科医でさえも美容医療を行う医師を否定する流れもあります。

しかしたるみを気にしている人がいたら、医療行為で改善することは悪でしょうか。マッサージやエステ的な施術でたるみ改善には限りがあります。何かを注入して骨などの萎縮を改善する必要があった場合に、無資格者では危険な要素が沢山あるのですから、解剖を熟知した医師資格のある人が適切な材料をもって正しく注入するべきであると思います。医師個人が美容医療を好きかどうかは別問題です。

美容は医療行為でないとして医師が関わらなくても良くなれば、悲惨なことが確実に増えます。悪と言われても構いませんが、美容は医師が関わるべきであるのです。

私自身も形成外科専門医を取得した当時は、自身が美容外科、美容皮膚科を医療として行うことに否定的でした。しかし実際にその仕事を見て経験して、その素晴らしさに魅了されました。

ときに、形成外科の教授でさえも美容医療を否定しています。そんな医師に限って、否定批判した医療自体を経験、実践したことがないのです。きちんと勉強してみて批判するならその意見を聞き入れようと思いますが、門外漢があれこれ言うのは良くないと思っています。様々な問題から美容医療そのものが医学界からが否定されるようにならなければいいなと思います。

 

ただ、美容医療に携わる医師も、昨今の美容ブームの中で、またSNSなどの自己顕示欲を満たす環境のもとで、やや倫理観が失われ、目先の売上や華やかさ、自分のプライドを満たすことに傾きすぎたのは事実です。私も含めて多くの美容外科、美容皮膚科医が気を引き締めて医療を行っていくべきであると考えます。急激に発展しすぎて混沌としている業界、今年は少し引き締まっていくのではないでしょうか。

 

自身への戒めも込めて、雑感を述べさせて頂きました。私自身もまだまだ未熟であり、他人にあれこれ言うことはできません。治療トラブルも多々あります。ただ美容医療という、昔はちっぽけだった業界がこんなに認知され受け入れられてきた今だからこそ、それに関わる医師や看護師は正しい治療を行なっていく必要があります。清貧にとは言いません。きれいごとだけ述べる偽善者になるつもりはありませんが、美容医療はお金だけではありません。患者様の笑顔が見られる、治療して楽しい世界です。やりがいを持って、常に勉強して、その上でビジネスで成功する医師が増えるといいなと思います。