実際の労働時間にかかわらず一定の時間働いたとみなす「裁量労働制」の対象拡大を巡る国の議論が大詰めを迎えている。経営側は「制度の満足度は高い」として拡大を求める一方、適用者の1割近くが「過労死ライン」の労働時間に達するなど運用面の危うさから慎重論は強い。裁量制で働いた当事者は「働かせ放題にできる制度では、もう働きたくない」と話した。(畑間香織)
◆「信用できない」裁量制を避けて転職した女性
神奈川県に住む30代のデザイナーの女性が今、うつ病で通院している。発症は、3年前に退社した都内のデザイン会社で正社員だった時だ。裁量制は「信用できない」と振り返る。
裁量制は、労使であらかじめ決めた労働時間を働いたとみなして賃金を支払う。出退勤の時間や仕事の進め方は働く人自身が決め、会社は指示しない原則だ。技術革新の進展などで労働者への具体的な指示が難しい業務が増えたことから国が1987年に導入した。
女性は出社時間が決められ、早く帰ると上司に怒られた。雑誌制作の下請けのために締め切り日の夜でも原稿が届かず、上司からは残業時に次々と仕事を振られた。1日10時間のみなし労働時間を2、3時間超えるのは当たり前。残業月80時間以上の過労死ラインの水準に達していた。会社がみなしを超えた分の賃金を払う義務はないため、手取りは月20万円ほどだ。
入社半年でうつ病と診断。退社を余儀なくされ転職先を探した...
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