2025年8月26日、日本のユーザーから熱視線を浴びていた“初代『ドラクエ』・ミーツ・ランダマイザー”なインディーJRPG『Splintered』のv0.9アップデートが行われ、日本語に対応しました。
本記事では、開発者のリチャード・マートランド氏にメールインタビューを実施。日本語対応の理由や、1対1戦闘を採用する理由など、気になることをお訊きしました。
『ドラクエ』は最初に遊んだゲームのひとつ
――自己紹介をお願いします。
マートランド:こんにちは!リチャード・マートランドと申します。『Splintered』をひとりで開発しています。
――ファミコン時代のJRPGをベースにしたゲームを作る理由を教えて下さい。
マートランド:それが自分の原点だからです!NES(ファミコン)は私が初めて手にしたゲーム機で、『ドラゴンクエスト』(アメリカでは『Dragon Warrior』というタイトルでした)は子供の頃に遊んだ最初のゲームのひとつでした。そして間違いなく大好きな1本でした。
――戦闘システムを1対1にした理由は何ですか?
マートランド:ターン制RPGにおける1対1の戦闘スタイルは、比較的早い段階で過去のものになってしまいましたが、『Splintered』の試作を始めたとき、1対1戦闘が持つ制約を拡張する実験をしたいと思ったんです。シンプルな土台に面白いメカニクスを積み重ねるのは、とても楽しい挑戦でした。
――お気に入りのJRPGを教えてください。
マートランド:『ファイナルファンタジータクティクス』は常に大きなインスピレーション源です。初めてプレイしたとき、戦術的な戦闘とジョブシステムに夢中になりました。楽曲も大好きで、この物語がHBOで映像化される日を心待ちにしています。
もうひとつすぐに思い浮かぶのは『クロノ・トリガー』ですね。テンポが完璧で、とても没入感のある作品です。
最大の特徴「ランダマイザー」について
――『Splintered』をローグライクではなく「ランダマイザー風ゲーム」と表現するプレイヤーもいます。ランダム要素を盛り込んだ意図を教えてください。
マートランド:ランダマイザーこそが『Splintered』の試作を始めるきっかけでした!初めてランダマイザーに触れたとき、大好きなクラシックゲームに突然新しい命が吹き込まれたように感じたんです。懐かしさと同時に新鮮さが味わえる体験でした。
ランダマイザーで遊んでいるうちに、それがひとつの「サブジャンル」として成立しているのでは、と考えるようになりました。そこで最初からランダマイザーを前提にしたゲームを作れば、より面白い要素を組み込み、制約を取り除けるのではないかと考えたんです。
――“無限ランダマイザー”を設計する際、破綻や混乱を防ぐために意識したルールや制約はありますか?
マートランド:『Splintered』のビジョンに直結する最も大きな進化から設計していくトップダウン方式で作っていきました。章やチャレンジのクリアに結びつく大きな要素は特に影響が大きいので、複雑さが爆発しないよう注意が必要でした。
一方で、小規模なランダム要素やコミュニティからの提案、思いつきのアイデアについては、相互作用を追跡し、綿密に計画・テストすることが重要でした。
また、『Splintered』のコア体験は作り込まれていますが、それ以降のランダマイザー部分はカスタマイズ可能で、プレイヤーが好きなだけランダム性を高められるようになっています。
――敵によって世界が“Splintered(分断された)”というアイデアはユニークです。どこから着想を得たのですか?
マートランド:『Splintered』では「ランダマイザー」というサブジャンルを探求することが目的だったので、物語もそれに沿うものにしたかったんです。ただゲームを作って、その上にランダマイザーを追加するだけでは不十分ですから。新規プレイヤーに向けて自然にコンセプトを紹介するためにも、体験全体に統合したかったんです。
――早期アクセス期間で最も印象的だった、あるいは影響を与えたフィードバックは何ですか?
マートランド:影響という意味では、第2章の設計を形作るうえで大いに役立ったフィードバックです。プレイヤーはNPCとのやり取りに期待していたのですが、ランダマイザー部分では十分に満たされていませんでした。その結果、ほとんどすべてのNPCに新しいセリフを追加し、重要キャラクターに基づくストーリークエストを導入しました。これによって全体の物語への没入感が高まりました。
最も印象的だったのは、初めてクリアしたプレイヤーが「自力でランダマイザーをクリアできて本当に感動した!」と投稿してくれたことです。それまでその人はTwitchでランダマイザーを観るのは好きでも、自分で挑戦するのは難しすぎると感じていたそうです。『Splintered』でランダマイザーに気軽に触れられることを提供できたのは、自分にとって大きな意味がありました。
――ソロ開発だからこそ実現できたこと、逆に大きな課題だったことは何ですか?
マートランド:『Splintered』のランダマイザーやアンロック式のチャレンジモードについては、自分の持っていたビジョンが非常に明確で、ソロ開発だからこそイメージ通りに実現できたと思います。
課題としては、ソロ開発では気分に関係なくあらゆる作業をこなさなければならないところでしょうか。私はデザイン・プログラミング・アート・音楽・マーケティングなど開発の大部分を楽しんで行いましたが、正直なところ少し孤独も感じました。ただ、『Splintered』を中心にコミュニティができ、フィードバックをもらえるようになったのはとても心強かったです。
日本語に対応する理由
――日本のプレイヤーからの反応はいかがですか?
マートランド:率直に言って素晴らしく、とても感謝しています。早期アクセス配信前のウィッシュリスト急増はXをきっかけとした日本からの関心によるもので、それに続いて日本のメディアが取り上げてくれました。おかげで『Splintered』はSteam上でも注目を集めるきっかけとなり、早期アクセス開始時の後押しになりました。現在では、日本からのウィッシュリスト数はアメリカと肩を並べています。
――日本語対応を決めた理由は何ですか?
マートランド:日本からの応援があったからです!インディー開発者にとってローカライズは時間もリソースも大きなリスクですが、ウィッシュリスト登録や布教によってそのリスクが大幅に軽減されました。本当にありがとうございます。夢が叶いました!
――翻訳作業で特に苦労した点や注意した点はありますか?
マートランド:150種類以上ある装備アビリティには細かい説明文がついていて、それを分かりやすく統一感を持たせるのは大きな挑戦でした。翻訳となるとその難しさは倍になります。
また、テキストのサイズや字間の問題もありました。8ビット風のテキストは、ピクセル単位で整えるとなると扱いが難しいんです。
――ローカライズの際に参考にした作品はありますか?
マートランド:ファミコン/NES時代のゲームを参考に、用語の選択を行いました。ローカライズを担当したMatsurika Gamesは当時のJRPGに精通しており、特に呪文名の命名規則などに細心の注意を払ってくれました。
――最後に、日本語版を楽しみにしている読者へのメッセージをお願いします。
マートランド:本当にたくさんのご支援ありがとうございます!『Splintered』に関心を持っていただけることは大きな意味を持っています。ぜひ楽しんでいただき、感想を聞かせてもらえたら嬉しいです!
――ありがとうございました!
『Splintered』は、PC(Steam)向けに早期アクセスで配信中。9月2日までは、20%オフ 464円で購入できます。
なお、9月中には値上げを予定しているほか、10月にはメインクエストが追加される正式アップデートも予定。ビビっと来た人は、いま購入してみてはいかがでしょうか!