投資家たちが次なる大型AIスタートアップの資金調達先を模索する中、あるベンチャーキャピタル企業はアナリストを解雇し、代わりに投資案件の運営を行うためにAIを活用している。
夫婦で共同創業者、ジェネラルパートナーであるマリナ・ダビドヴァ(Marina Davidova)氏とニック・ダビドフ(Nick Davidov)氏が共同設立した4年目のベンチャーキャピタルDavidovs Venture Collective(DVC)は、シリーズAおよびB段階のAIスタートアップ向けに7500万ドル(約113億円、1ドル=151円換算)のファンドを立ち上げた。
同社は、通常投資案件の発掘や審査を支援するアナリストたちを解雇したと発表。代わりに、OpenAI、グーグル(Google)、メタ(Meta)、マイクロソフト(Microsoft)、テスラ(Tesla)、スペースX(SpaceX)、パープレキシティ(Perplexity)の創業者やエンジニアを含む170の限定パートナー(LP)のネットワークを活用し、新たな案件を発掘。さらに彼らにAIツールを提供している。
ダヴィドヴァ氏によれば、DVCは当初5名のパートタイム・フルタイムアナリストを雇用していたが、1年以上前にAI導入に伴いこれらの役職を廃止した。
DVCのLPネットワークは現在、AIエージェントを活用して投資案件メモの作成、デューデリジェンス、ポートフォリオ監視を支援している。LPも開発に携わったこれらのAIエージェントは、創業者のニーズを特定し、コミュニティ内の関連専門家とマッチングすることも可能だ。
LPは創業者に対し、採用・営業・製品開発・ネットワーキング支援を提供し、その対価として投資運用者が得る利益分配金(キャリード・インタレスト)を受け取る。ダビドフ氏によれば、各案件のキャリード・インタレストの約30~40%が投資家コミュニティに分配され、30~40%がパートナーに、残りが同氏とダヴィドヴァ氏の間で分配されるという。
「当社には、我々では決して雇うことのできない驚くべき才能が集まっています。彼らはザッカーバーグが1億ドルを提示するような人材なのに、週末に無償で当社で働いてくれているのです」(ダヴィドフ)
AIは同社の生産性を向上させる一方で、創業者の精神状態といった資質を評価する点では人間を代替することはできないと、ダヴィドヴァは話す。
他のベンチャーキャピタル企業もAIでアソシエイトを代替している。ポイント72ベンチャーズ(Point72 Ventures)のマネージングパートナー、スリ・チャンドラセカール(Sri Chandrasekar)はAIによって人員を50%以上削減できると予測していると、Business Insiderが以前報じている。
夫妻は50のLPネットワークを基盤にサンフランシスコ拠点のDVCを2021年に設立した。
そのシードファンドはこれまでに、パープレキシティ、エッチド(Etched)、Thinking Machines Lab)、Higgsfield など 120 社の企業に 2100 万ドル(約31億円)を投資している。
DVC の新ファンドを支援する LP には、テッククランチ(TechCrunch) 創設者のマイケル・アリントン(Michael Arrington)、パープレキシティ共同創設者のデニス・ヤラッツ(Denis Yarats)、Zencoder 創設者のアンドルー・ファイルフ(Andrew Filev)、Semrush 創設者のオレグ・シェゴレフ(Oleg Shchegolev)などが名を連ねている。
7500 万ドルのファンドの立ち上げとともに、DVC は 2 人のジェネラルパートナー、起業家の メル・ガイモン(Mel Guymon)と チャールズ・ファーガソン(Charles Ferguson)を迎え入れ、Meta AI のプロダクトマネージャーである アレクシー・リューバック(Alexey Rybak )をベンチャーパートナーに任命した。ガイモンはビジネスセールスサポートとガバナンスを主導し、ファーガソンはディールの創出に注力することになっている。
DVC によると、この新しいファンドは4000 万ドル(約60億円)を確保しており、残りの金額については機関投資家と最終調整中とのことだ。