学校に不審者が侵入したらどうする? さすまたの正しい使い方は? ALSOKに聞きました
教育話題
5月8日に東京都立川市の小学校で発生した侵入暴行事件。保護者が呼び寄せた男2人が教職員を暴行し5人がけがをしましたが、児童には幸いけががありませんでした。2001年で発生した大阪教育大付属池田小学校の事件など、学校を狙った事件はたびたび起こりますが、侵入者に対して、学校側はどういった準備をし、発生した場合にはどう対処すべきなのか。警備会社ALSOK(綜合警備保障)のセキュリティ・コンサルタント、瀬戸拓郎さんに、学校や教育委員会へのアドバイスをうかがいました。
立川の事件「想定外の出来事でも、日頃の訓練が生きていた」
ALSOKは、学校や教育委員会を対象に講習会や研修会を開き、児童生徒を守るための防犯教育を手がけている。「セキュリティ・コンサルタント」とは、全国警備業協会が定める警備業界の最高位資格で、その保有者のひとりである瀬戸さんは、これまで学校を対象とした防犯教育に長く携わってきた。
瀬戸さんはその立場から、「『保護者が侵入を手引き』、『複数名による犯行』といった特殊性ゆえに咄嗟(とっさ)の判断が求められる難しい事件でしたが、児童にけがを負わせることなく守り切った先生方には深い感謝と敬意を表します」と話す。
近くのクラスの担任と児童が教室の出入り口に机を集めてバリケードを作った、ということについても、「高学年ならまだ分かりますが、低学年の児童をまとめながら速やかにバリケードを作ることは簡単ではないと思います。日頃の訓練のたまものではないでしょうか」と驚く。
一方で、「児童が心的なトラウマを抱えてしまったかもしれません。学校側としては防ぎようがないことではありますが」と、学校を狙った事件の難しさも口にした。
新任の先生が来る年度初めに、教職員の訓練で認識合わせを
付属池田小の事件から20年以上が経過し、事件を知らない若い先生もいるなど、風化の兆しが見えるという。「悲劇を繰り返さないためにも、事件の教訓を教育現場で語り継いでいかなければいけません。類似事件が起こるたびに講習の問い合わせが増えますが、本来は自主的かつ定期的に訓練を行っておくべきです」と瀬戸さんは指摘する。
防犯対策として常に学校が悩むのは、校門を閉ざすか、開けておくか、という問題。瀬戸さんは「誰でも入れるという状態は、防犯上はやはり褒められた状態ではありません。地域への開放性など、実情として難しい学校があるのは承知しておりますが、提言としてはやはり好ましくないです」と語る。
その上で、閉鎖が難しい学校には、業者や保護者が受付まで行く動線・ゾーニングを、地面や床の色などで明確に示すことを提案する。「それを逸脱して行動する人物がいたら、不審者・不法侵入者と判断し、速やかに対応に移るべきです」
また、新任の先生が来る年度初めなど、平常時から教職員で訓練をすることも「声を大にしてお願いしたい」と強調する。学校それぞれの児童生徒の避難誘導方法や、「さすまた」など防犯設備の位置・使用方法、非常時の対応マニュアルを確認し、教職員の認識合わせを図ってほしいという。
警察への通報は「空振りを恐れない。重複しても構わない」という二つの心構えを説く。「悪い人じゃないかもしれない、もう誰かが通報してるかもしれない」と考えて手遅れになるより、子どもを守るため迷わず通報する、という姿勢も、平常時の認識合わせの段階で周知しておく必要があるという。
侵入者発見! 次の行動で大切なことは
いざ不審者が侵入した場合、どう対応すべきか。瀬戸さんが挙げる、二つの基本は…