テストレポート
期待の携帯型ゲームPC「ROG Xbox ALLY」テストレポート。Xbox由来のグリップと全画面UIで使い勝手はどう変わった?
今回は,発売に先駆けてROG Xbox ALLYシリーズのスタンダードモデルである「ROG Xbox ALLY」と,上位モデルの「ROG Xbox ALLY X」を借用する機会を得たので,ROG ALLYとの比較を交えて,実力を検証したい。
ROG Xbox ALLYシリーズは,ディスプレイの左右にゲームパッドを備えた携帯型ゲームPCだ。従来製品であるROG ALLYと同じく,ASUSとMicrosoft,AMDの連携によって開発されたそうだ。OSには,携帯ゲームPC向けにカスタマイズされたWindows 11を搭載する。
製品名に「Xbox」とあるが,本製品でXbox Series X|S専用ゲームをプレイできるわけではない。プレイできるのは,以下のとおりだ。
- SteamやEpic Games Storeで購入したPCゲーム
- 定額制ゲームサービス「Xbox Game Pass」で配信されているゲーム
- 「Xbox Play Anywhere」対応ゲーム
- 「Xbox Cloud Gaming」でPC向けに配信されているゲーム
簡単に言えば,普通の携帯型ゲームPCと同じと考えていい。
Xboxイメージの大きなグリップで持ちやすくなった
ROG Xbox ALLYシリーズのディスプレイパネルは,いずれも,従来のROG ALLYと同じく,7インチサイズで解像度1920×1080ドット,最大リフレッシュレート120Hzの液晶パネルをである。
光沢のあるグレアパネルながら,パネルの輝度が,500cd/m2と比較的高いことに加えて,光の反射を抑えるコーティング技術「DXC」を採用することで,映り込みが気になりにくい点も変わらない。
可変リフレッシュレート機能「VRR」と,AMD独自のディスプレイ同期技術「FreeSync Premium」に対応するのも共通だ。
ROG Xbox ALLYシリーズで,従来製品から大きく変わったのが,側面から背面にかけて目立つグリップ部分だ。このグリップは,「Xbox ワイヤレス コントローラー」をイメージしたものだという。表面には,滑り止めのテクスチャ加工を施している。
筐体の加工も変更しており,従来のROG ALLYは,ざらざらとしたマットな手触りだが,ROG Xbox ALLYシリーズはグリップを除くと,全体的にさらさらとした感触となっている。
筆者は普段,携帯型ゲームPCをバッグに入れて持ち運ぶことが多い。大きなグリップがあると,薄手のバッグに収納しにくいので,従来のROG ALLYのようなスリムであるほうが都合が良い。ただ,ROG Xbox ALLYをちゃんと持ってみると,やはりグリップがあるほうが持ちやすいのは確かだ。
筆者の場合,スリムな携帯型ゲームPCを持つときは,スマートフォン用ゲームパッドのように左右から挟み込む形で力を入れていた。それに対して,ROG Xbox ALLYは,グリップを下から抱えるようにつかむことで,左右から力を込めなくても持てるようになったのがポイントだ。
短い時間であれば,それほど気にならないが,ある程度長い時間持つほど,違いに気が付く。このあたりは,持ち運びやすさと持ちやすさのどちらを重視するかで製品の選び方が変わりそうだ。
ROG Xbox ALLYシリーズの公称本体サイズは,290(W)×121(D)×27.5〜50.9(H)mm。ROG ALLYのサイズは,280(W)×111.38(D)×21.22〜32.43(H)mmなので,幅と奥行きのどちらも10mmほど大きくなった。
実測した本体重量は,ROG Xbox ALLYが約673gで,ROG Xbox ALLY Xが約719gと,ROG ALLYの約608gと比べると重くなっている。これは筐体サイズが大きくなったことに加えて,ROG Xbox ALLYシリーズでは,より大容量の内蔵バッテリーを搭載しているからだ。
また,ROG Xbox ALLY Xがより重いのは,性能の高い冷却機構を備えている影響と思われる。
インタフェース類は,上側面にまとめられており,指紋認証センサー内蔵の電源ボタン,音量調整ボタン,4極3.5mmミニピンヘッドセット端子,microSDカードスロットが並ぶ。
ROG Xbox ALLYとROG Xbox ALLY Xでは,USBポートの構成が以下のように異なる。
- ROG Xbox ALLY:USB 3.2 Gen 2 Type-C×2
- ROG Xbox ALLY X:USB4×1,USB 3.2 Gen 2 Type-C×1
ゲームパッドにXboxボタンが追加
ディスプレイの左右に備えたゲームパッドは,左奥に左アナログスティック,右手前に右アナログスティックを備えたXbox風レイアウトを採用する。従来のROG ALLYは,アナログスティックやボタンの感触が良かった。ROG Xbox ALLY Xシリーズもそれを引継いでいるが,筐体サイズが大きくなったためか,[A/B/X/Y]ボタンのストロークが深くなった印象を受ける。
また,トリガーボタンは,振動機能を備えた「インパルストリガー」となっており,この辺りもXbox ワイヤレス コントローラーの要素を取り込んでいる
ROG Xbox ALLYのXbox Game Barは,一般的なPCのそれとは異なり,ASUS独自の設定用ソフトウェアの「Armoury Crate SE」を統合している。Armoury Crate SEの設定用メニューである「コマンドセンター」から,画面解像度やリフレッシュレートの変更,スクリーンキーボードの呼び出しも行える。
また,Xboxボタンは後述する「Xbox全画面表示エクスペリエンス」とWindosデスクトップの切り替えも行う。
背面には,拡張ボタンの[マクロ1/マクロ2]ボタンを搭載しており,Armoury Crate SEから,キーボードやマウスのボタンを割り当てられる。さらにマクロボタンとゲームパッドのボタンを組み合わせて,スクリーンキーボードの表示や,スクリーンショットの撮影といった機能も設定可能だ。
携帯型ゲームPCに最適化したWindos 11を搭載
ROG Xbox ALLYシリーズにおける大きなポイントとして,携帯型ゲームPC向けに最適化したWindos 11を搭載するのも挙げられよう。
ROG Xbox ALLYシリーズを起動すると,通常のWindowsデスクトップ画面ではなく,「Xbox」アプリが全画面表示される。
この全画面表示したXboxアプリは,「Xbox全画面表示エクスペリエンス」という新しいUIで,ゲームパッドでの操作に最適化しており,すぐに自分が購入したゲームやGame Passで配信しているゲーム,Xbox Cloud Gamingにアクセスできるのが見どころだ。Xboxアプリ上で購入したゲームだけでなく,Steamでインストールしたゲームも表示する。
Xboxボタンを長押しすると,すぐにXbox全画面表示エクスペリエンスから,通常のWindowsデスクトップ画面へと切り替え可能だ。
一方で,Windowsデスクトップ画面からXbox全画面表示エクスペリエンスに戻すことも可能だが,再起動をうながすメッセージが表示される。
ASUSやMicrosoftによると,Xbox全画面表示エクスペリエンスは,単なるアプリランチャーではないという。Xbox全画面表示エクスペリエンスを利用しているときは,ゲームプレイに必要な部分のWindowsだけをを動かすそうで,通常のWindowsと比べて,メモリの消費量を2GBほど抑えられるとのこと。
Xbox全画面表示エクスペリエンスを使用すると,タスクマネージャーを起動できないので,どんなプロセスが停止しているのか分からない。Armoury Crate SEのシステム統計情報で確認すると,Xbox全画面表示エクスペリエンスの使用時は,メインメモリ消費量が6GB前後だったのに対して,Windowsデスクトップ画面に切り替えると,6GB半ばから7GB程度まで増えた。
また,ROG Xbox ALLYの登場に合わせて,Microsoftは,携帯型ゲームPC向けの互換性検証プログラム「ハンドヘルド互換性プログラム」も提供している。これは,ゲームタイトルが携帯型ゲームPC向けに最適化されているかどうかを示すものだ。ゲームパッドやスクリーンキーボードでの入力に対応するか,小さな画面に表示するUIやテキストが見やすいかなどを検証しているという
この検証結果に応じて,Xboxストアにおいてゲームタイトルごとに,「ハンドヘルドに最適化済み」「ほとんど互換性あり」「非対応」などと表記される。「ほとんど互換性あり」や「非対応」のゲームをインストールしようとすると,最適化されている要素と注意する必要がある要素をリストで表示するので,ゲーム選びの目安となるだろう。
ベンチマークテストで,ROG Xbox ALLYシリーズの性能を検証
続いては,ROG Xbox ALLYシリーズの基本的なスペックを紹介しよう。2つの製品は,搭載SoC(System on a Chip)が異なり,スタンダードモデルのROG Xbox ALLYは,AMDの「Ryzen Z2A」を採用する。Ryzen Z2Aは,Zen2アーキテクチャベースの4コア8スレッドCPUと,RDNA 2世代のGPUを統合したAPUで,AMDによると,電力効率を重視したプロセッサだという。
上位モデルのROG Xbox ALLY Xに採用するのは,「Ryzen Z2 AI Extreme」だ。こちらは,8コア16スレッドのCPUコアとRDNA 3.5世代のGPUを統合している。Ryzen Z2 ExtremeのCPUコアは,Zen5アーキテクチャベースの高性能コア×3基と,Zen 5cアーキテクチャベースの高効率コア×5基を組み合わせることで,高い性能とバッテリー駆動時間を両立するそうだ。
さらに,50 TOPSのAI処理性能を持つNPUも統合しており,Microsoftが提唱するAI処理対応PC「Copilot+ PC」の条件も満たしている。
搭載CPU以外の違いとして,メインメモリ容量は,ROG Xbox ALLY Xが24GB,ROG Xbox ALLYが16GBで,内蔵ストレージ容量は,1TBと512GBとなる。また,内蔵バッテリー容量は,ROG Xbox ALLY Xが80Wh,ROG Xbox ALLYが60Whだ。
ここからは,ベンチマークテストで,ROG Xbox ALLYシリーズと既存製品であるROG ALLYの性能を比べてみよう。ROG ALLYは,搭載SoCに「Ryzen Z1 Extreme」を搭載した上位モデルである。
ROG Xbox ALLYシリーズとROG ALLYは,Armoury Crate SEから,「Windows」「サイレント」「パフォーマンス」「Turbo」という4つのプリセット動作モードと,ユーザーがカスタマイズできる「手動」モードの計5つから動作モードを選択できる。今回は,標準設定の「パフォーマンス」と,最も性能重視の動作モードである「Turbo」,静音重視の「サイレント」でテストを行った。グラフ内の表記は以下のとおりだ。
- XALLYX(t):ROG Xbox ALLY Xの「Turbo」設定
- XALLYX(p):ROG Xbox ALLY Xの「パフォーマンス」設定
- XALLYX(s):ROG Xbox ALLY Xの「サイレント」設定
- XALLY(t):ROG Xbox ALLYの「Turbo」設定
- XALLY(p):ROG Xbox ALLYの「パフォーマンス」設定
- XALLY(s):ROG Xbox ALLYの「サイレント」設定
- ALLY(t):ROG ALLYの「Turbo」設定
- ALLY(p):ROG ALLYの「パフォーマンス」設定
- ALLY(s):ROG ALLYの「サイレント」設定
まずは,グラフィックスベンチマークの定番である「3DMark」から見ていこう,DirectX 11テスト「Fire Strike」の総合スコアをまとめたのが,グラフ1だ。
Ryzen Z2 AI Extremeを搭載したROG Xbox ALLY Xのスコアが突出している。サイレント設定でも,ROG ALLYのTurbo設定に並ぶスコアを発揮しているのは驚きだ。また,ROG Xbox ALLY Xは,ほかの製品と比べて,サイレント設定時にスコアが落ち込みにくいのもポイントだ。
Ryzen Z2Aを採用したROG Xbox ALLYの結果が振るわないのは,GPUの世代が古いことが影響していると思われる。
続いては, DirectX 12のテストとなる「Time Spy」の結果(グラフ2)を見てみよう。
こちらもFire Strikeと傾向は同じで,ROG Xbox ALLY Xのサイレント設定と,ROG ALLYのTurbo設定が近しいスコアになっている。
ROG Xbox ALLYのTurbo設定とパフォーマンス設定で,スコアに大きな差がないのも注目したいポイントだ。
Time Spyより新しいDirectX 12テストである「Steel Nomad」の結果が,グラフ3だ。
このテストでは,ROG Xbox ALLY Xのサイレント設定が,ROG ALLYのTurbo設定を完全に上回っており,軽量版のSteel Nomad Lightで約7%,通常のSteel Nomadで約15%の差を付けている。ただ,レンダリング解像度3840×2160ドットのSteel Nomadは,いずれの製品でもかなりフレーム落ちがひどく,携帯型ゲームPCには負荷が高すぎるようだ。
リアルタイムレイトレーシング性能を検証するPort Royalの結果が,グラフ4だ。
こちらもほかのテストと同様で,ROG Xbox ALLY Xが頭ひとつ抜けたスコアを示した。また,ROG ALLYのTurbo設定とパフォーマンス設定で,Fire StrikeやTime Spyと比べて,大きな差が生じているのも目につく違いとなる。
グラフィックス以外の性能を検証するために,「PCMark 10」でもテストを行った。グラフ5は,「PCMark 10 Extended」から,Gaming以外のスコアをまとめたものだ。カスタム実行となるので総合スコアは計測されない。
アプリの起動やWebブラウジング,ビデオ会議での性能を検証するEssentialsでは,3DMarkほどの差は見られなかった。3DMarkやPCMark 10を提供するUL Benchmarksは,軽作業を行う一般的なPCにおける目安として,Essentialsのスコアが4100以上という基準を示しているが,いずれの製品もこれを優に超えている。
文書作成や表計算といった用途でのProductivityでは,ROG Xbox ALLYのスコアが落ち込んだ。また,3DMarkとは異なり,ROG Xbox ALLY Xのサイレント設定で,スコアが大きく沈んでいる。
写真や動画編集をはじめとするDigital Content Creationのスコアは,3DMarkと似た傾向で,ROG Xbox ALLY Xのサイレント設定と,ROG ALLYのTurbo設定が近しいスコアとなっている。
さらに,「PCMark 10」の「Battery Life benchmark」で,バッテリー駆動時間も計測した。今回は「Gaming」プロファイルを用いて,バッテリー駆動でずっとゲームをプレイし続けた場合の駆動時間を調べた。結果をまとめたのが,グラフ6だ。
ここでは,ROG Xbox ALLYのサイレント設定の結果が群を抜いている。より,大容量のバッテリーを搭載しているROG Xbox ALLYのサイレント設定と比べて約1.47倍,従来ROG ALLYと比べて,約2.4倍となる5時間38分のバッテリー駆動を実現した。
消費電力の高いGamingでも5時間以上の駆動時間であれば,Webブラウジングや動画視聴では,もっと長時間のバッテリー駆動が可能だろう。
性能面では,上位モデルや前世代モデルに水をあけられたROG Xbox ALLYだが,バッテリー駆動では,大きなアドバンテージがありそうだ。それほど処理能力が求められないようなゲームや,クラウドゲームを中心にプレイするのであれば,ROG Xbox ALLYの長時間駆動は魅力だろう。
劇的に進化したROG Xbox ALLYシリーズ
ただ,ROG Xbox ALLYシリーズを,ゲームだけではなく,一般的な用途でも使いたいという場合は,既存の携帯型ゲームPCと,ユーザー体験はそれほど変わらないかもしれない。より代容量のメインメモリや内蔵ストレージを搭載した製品のほうか,快適に利用できそうだ。
ROG Xbox ALLYシリーズは,スタンダードモデルと上位モデルの立ち位置が明確だ。ある程度処理性能が求められるゲームをプレイするなら,ROG Xbox ALLY Xを選ぶべきだろう。一方,軽いゲームやクラウドゲームを長時間のバッテリー駆動でプレイしたいなら,ROG Xbox ALLYを選ぶのが良さそうだ。
ASUSのROG Xbox ALLYシリーズ製品情報ページ
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- 編集部:千葉大輔
- カメラマン:佐々木秀二
(C)ASUSTeK Computer Inc.





















