生命現象を自然科学的に、主に機能的側面から探求する学問。「生命が何でできているか？」ではなく「どうできているか？」を問う。physiology。
『歌唱指導者による音声障害患者の訓練：治療へのアプローチと実践』 pubmed.ncbi.nlm.nih.gov 全米歌唱教師協会(NATS)などの音声分野の団体に所属する歌唱(音声)指導者377人を対象に、音声障害のクライアントへの対応の実態を調査した。 指導者からの786件の回答のうち48%で、音声障害,音声に関連する手術,発声器官の疾患から回復中の歌手を指導した経験があった。また、全体の3分の2は、声帯結節,声帯ポリープ,声帯嚢胞に対応した経験があると回答した。 指導者の大多数は音声パフォーマンスに関する修士号や博士号を取得していたが、言語聴覚士としての訓練を受けた者は少なかった。言語聴…
肩こりには「水分不足」も関係 — 生理・行動・職場対策 長時間のデスクワークやスマホ操作で起きる首・肩のコリ（肩こり）は、姿勢や筋肉の負担だけでなく、全身の水分バランス（脱水・低水準の慢性脱水）と関連している可能性があります。 💧 要点（冒頭まとめ） 短く言うと、適切な水分補給は筋肉や神経、関節の働きをサポートし、肩こりの発生要因を和らげる可能性があります。水分不足は筋血流や代謝、電解質バランスに影響し、筋緊張やけいれん、痛覚知覚の変化を通じて不快感を増幅し得ます。とはいえ肩こりは多因子疾患であり、水分補給だけで全てが解決するわけではありません。視機能・姿勢・作業環境・筋機能・生活習慣と組み合…
「アイスクリーム」は体温を上げる？意外なメカニズム 🍦 アイスクリームが体を「冷やす」と思われる理由 多くの人は、暑い夏にアイスクリームを食べると涼しくなると感じます。確かに冷たい食品が口の中を冷やし、舌や食道を通る際に一時的に体の内部を冷却する効果があります。これが「アイス＝体温を下げる」という一般的なイメージを形作っているのです。 しかし実際には、その効果は数分から十数分程度の一時的なものでしかありません。さらにその後、体は「冷え」に反応して、逆に体温を上げる仕組みを働かせてしまうのです。 🔥 アイスクリームで体温が上がる仕組み 冷たいものを食べると、体は内臓が冷えるのを防ぐために代謝を活…
🧩 汗腺の基礎—タイプと役割を最初にそろえる 人の汗腺は主にエクリン汗腺とアポクリン汗腺に分類されます。体温調節の主役はエクリン汗腺で、全身に広く分布し、分泌液はほぼ無臭の水様性です。アポクリン汗腺は腋窩など限られた部位に分布し、精神的緊張やホルモンの影響を受け、皮膚表面の常在菌により匂いが生じやすいタイプです。 項目 エクリン汗腺 アポクリン汗腺 主な役割 体温調節（蒸発に伴う熱放散） 匂い・フェロモン様シグナル（部位限定） 分布 全身（手掌・足底・額など高密度） 腋窩・外耳道・乳輪・外陰部など 分泌様式 水様性・ほぼ無臭 脂質やタンパク質成分を含む 環境適応性 高い（能動汗腺数・閾値・出力…
宇宙飛行士は「味覚」が変わる——微小重力で風味はどう変わる？ 宇宙飛行士の間では、軌道上で「食べ物の味がぼんやりする」「地上より濃い味を欲する」といった体験談が語られてきました。これは単なる気分の問題ではなく、微小重力による体液移動、鼻腔のむくみ（充血）、乾燥・温度・CO₂・騒音などの環境因子が、私たちの風味（味＋香り＋口腔感覚）の統合に影響するためです。 注：ここでいう「味覚の変化」は厳密には風味知覚の変調を指す場面が多く、実際には嗅覚低下や口腔感覚の変化が「味」の印象を左右します。個人差が大きい点にも留意してください。 🧠 風味の基礎：味・香り・口腔感覚が合わさって「おいしさ」になる 風味…
第87回「TOUCH摂食咀嚼嚥下ウェビナー 食物調整はどうするのか？どのように食べてもらうのか？」1回目終了しました． 摂食咀嚼嚥下リハビリテ－ションに必要な３つのキーフレーズの３番目「食事の調整」ウェビナー１回目を７月13日に行いました．どのような食事を提供するかについての世間（学会も含めて）一般の考え方には，口腔生理学的な視点が全く欠けており，基本は機械で測定した「粘度」だけにフォーカスしています．その結果，現場では使えないものになっています．例えば，日本摂食嚥下リハ学会が推奨する「嚥下調整食学会分類2021」に示される「ゼリー」「プリン」「ペースト」…という単語で．「はて，どんな物性にし…
カフェインの半減期は人それぞれ！？身体への影響に個人差がある理由とは カフェインはコーヒーや紅茶、エナジードリンクなどに含まれ、日常的に摂取されている成分です。「目が覚める」「集中力が上がる」といったポジティブな作用がある一方で、「眠れない」「動悸がする」などの副作用に悩まされる人もいます。 特に近年注目されているのが、カフェインの半減期（体内で効果が半分になるまでの時間）には大きな個人差があるという事実です。 この記事では、カフェインの半減期とは何か、なぜ個人差があるのか、体質・生活習慣・年齢・性別・妊娠などの要因がどのように影響するのかを、科学的な知見とともに解説していきます。 ☕ カフェ…
涙のさらなる秘密：泣くとスッキリする理由とは？ 私たちは悲しいときや感動したとき、嬉しいときなどに涙を流しますが、「泣いたあと、なぜか気持ちがスッキリする」という経験、ありませんか？この現象には、実は科学的な背景があります。 1. 泣くとスッキリするのはなぜ？ 感情による涙（感情性涙）には、ストレスを感じたときに分泌されるホルモンが含まれているという研究があります。たとえば、ACTH（副腎皮質刺激ホルモン）のような成分が涙とともに体外へ排出されることで、ストレスが和らぐ可能性が指摘されています。 さらに、涙を流す行為自体が、副交感神経を優位にする（リラックス状態を促す）ことも報告されています。…
涙の不思議：3種類の涙とその驚きの役割 人間が流す涙には、実は3つの種類があることをご存じですか？「基礎分泌涙」「反射性涙」「感情性涙」は、それぞれ異なる役割と成分を持ち、私たちの身体や心に深く関わっています。 1. 目を潤す「基礎分泌涙」 基礎分泌涙は、私たちが意識しないうちに常に分泌されている涙です。目の表面を保湿し、乾燥を防ぎながら異物から保護する役割があります。成分には、水分、電解質、脂質、タンパク質、さらにリゾチームなどの抗菌物質が含まれ、目の健康を保つための第一線として働いています。 2. 刺激から守る「反射性涙」 反射性涙は、玉ねぎを切ったときや風が強いとき、目にゴミが入ったとき…
1. エイコサノイドとは？ エイコサノイドは、炭素数20の不飽和脂肪酸から生成される生理活性脂質の総称です。代表的なものとして、プロスタグランジン（PG）、トロンボキサン（TX）、ロイコトリエン（LT）などがあります。これらの物質は、炎症、血圧、血小板凝集、子宮収縮など、様々な生理作用に関与しています。 2. エイコサノイドの生成経路 エイコサノイドは、細胞膜のリン脂質に存在するアラキドン酸から生成されます。刺激を受けると、ホスホリパーゼA2によってアラキドン酸が遊離し、シクロオキシゲナーゼ（COX）またはリポキシゲナーゼ（LOX）の作用を受け、それぞれPG、TX、LTなどが生成されます。 シ…