侮辱罪の事例集、法務省が公開 口コミ欄への悪口で罰金10万円も
刑法改正により法定刑が2022年に引き上げられた侮辱罪の運用状況を検証するため、法務省の有識者検討会が2025年9月12日に開催されました。議論の基礎資料として法務省刑事局が調査・作成し公表したのが、「侮辱罪の事例集」と事件処理状況のデータです。SNSやインターネット掲示板、検索サイトの口コミ欄への書き込みで罰金になった事例も複数掲載されています。
刑法改正により法定刑が2022年に引き上げられた侮辱罪の運用状況を検証するため、法務省の有識者検討会が2025年9月12日に開催されました。議論の基礎資料として法務省刑事局が調査・作成し公表したのが、「侮辱罪の事例集」と事件処理状況のデータです。SNSやインターネット掲示板、検索サイトの口コミ欄への書き込みで罰金になった事例も複数掲載されています。
目次
刑法第231条によると、侮辱罪は「事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する」と定められていたところ、2022年7月7日からは「事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、1年以下の懲役若しくは禁錮若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する」と定められました。
刑法第230条の名誉毀損罪は「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する」とあります。
具体的な事実が必要な名誉棄損罪とは違い、侮辱罪は「あいつはバカだ」など具体的な事実を伴わなくても処罰対象になり得ます。
法務省の公式サイトで公表したインターネット事案の侮辱罪の処理状況によると、最も多かったのは不起訴で165人(54%)でした。次に多かったのは略式命令請求の105人(34%)、家庭裁判所送致が29人(10%)、そして公判請求は6人(2%)でした。
非インターネット事案では285人(79%)から見ると、厳しい対応となっている割合が高くなっています。
侮辱罪は、刑法改正により法定刑が「1年以下の懲役もしくは禁錮(現在は拘禁刑)」と「30万円以下の罰金」となりました。
インターネット事案で科刑状況を整理すると、最も多かったのは罰金(10万円以上20万円未満)で74人(71%)でした。次いで、科料(1000円以上1万円未満)が19人(18%)を占めています。罰金30万円以上を科されたのは5人(5%)、10万円未満と20万円以上30万円未満がそれぞれ3人(3%)でした。
法務省の公式サイトに公開された事例集には、誹謗中傷がどのように行われ、どのような処分につながったかの具体的な裁判結果が示されています。
インターネット上の口コミ欄に書き込まれた悪口が侮辱罪として処断された例が複数あります。
検索サイト上の被害者勤務先(病院等と推測される)の口コミ欄に、「薬のチョイスなど、全然下手で、ハッキリ言ってヤブです」「待ち時間も お父さんの時より 凄くかかります。もっと 勉強して下さい」などと掲載した行為に対し、略式命令請求により科料9000円が科されています。
また、検索サイト上の被害者勤務先の口コミ欄に、「治療始めばかり、気づいて●●(被害者の名字)先生は嘘ばかりの話をして、(中略)●●(被害者の名字)先生患者様に嘘ついたら患者様の迷惑をかけますよ。嘘つくやめてほしいです。」などと掲載した行為も略式命令請求により科料9000円が科されています。
このほか、検索サイトの被害者勤務先の口コミ欄に「(被害者の氏名)が、お前は頭の悪い、●●(会社名)の複合機も買うお金の無い貧乏人だから頑張れと励ましてくれました♪」などと記載の画像などを投稿した事案では罰金10万円となりました。
4回にわたり、検索サイト上の被害者勤務先の口コミ欄に、「この病院、最低です。●●(駅名)●●(被害者勤務先名)。命の危険性あり」などと投稿した事例では20万円の罰金となっています。
インターネット上の匿名性が高い場所での侮辱行為にも、重い罰金が科されています。
被告人が経営する総合探偵社が開設したホームページ内のブログに、探偵事務所の代表である被害者について、「泥棒大好きW ぼく新人探偵W」などと前記探偵事務所が悪事を企む探偵事務所であるかのような内容を掲載した事例では、10万円の罰金となりました。
SNSに、「●●(地名)が生んだ負の遺産、●●(被害者の氏名)ポンコツ獣医●●(被害者の氏名)」旨の発言内容を記録した動画データを掲載したり、「●●(被害者の名字)畜産っていう、●●(地名)に●●(被害者の名字)畜産っていうなんか畜産会社があんねんけど、そこの息子、●●(被害者の氏名)っていうデブがおるんよ。で、21、2かのあのデブやけどいきっとんよ、まじで。」旨の発言内容を記録した動画データを掲載した事案でも10万円の罰金となりました。
警察庁の公式サイトによると、被害を把握した場合、削除依頼や相談・通報に備え、掲載されたサイトの名称、URL、書き込み日時、内容等を記録(印字)しておくことが重要です。
問題の書き込みを削除したい場合、掲示板の管理人やプロバイダに依頼する方法が定められています。対応に迷う際は、専門知識を有する違法・有害情報相談センターや、法務省の人権相談窓口への相談も併せて検討できます。特に人権相談では、事案に応じて法務局がプロバイダ等への削除依頼を行うこともあります。
相手方の処罰を望む場合は、記録を持参の上、最寄りの警察署に相談してください。
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