目次

  1. 伝統産業「紙すき」に根差す企業 EVの波に対応できるか
  2. 会社の将来を担う「断熱する紙」
  3. アトツギ甲子園出場への躊躇と不安
  4. アトツギ甲子園で「見えてきた景色」
  5. MVVにもとづいた経営と地方創生
  6. アトツギ甲子園がもたらした3つの変化

 セキネシール工業は、ユネスコの無形文化遺産である1300年の歴史をもつ小川和紙の伝統技術をもとに、創業者の祖父がシート状の製品などを手がけるようになりました。

様々なシート状の製品をつくるセキネシール工業の製造工程
様々なシート状の製品をつくるセキネシール工業の製造工程(関根さん提供)

 セキネシール工業が手掛ける製品は、自動車部品の隙間に挟み込み、気体やガソリンなどの漏れを防ぐという特殊な部品です。大型の紙すき機械を用いて生産し、世界中のメーカーがその材料を採用しているといいます。

 しかし、事業は過渡期にあります。過去30年間で売上と社員数は3分の1にまで減少。今後、電気自動車(EV)が普及することが予想されるなか、今後の市場の変化にどのように対応できるかが問われています。

シート状の断熱材
シート状の断熱材

 そんななか、関根さんは「特殊な紙をすく技術」に活路を見出そうとしています。たとえば、EVが普及するなかで、火災事故のリスクが注目されつつあります。衝撃などでバッテリーセルから発火してしまうと数秒で燃え広がるおそれがあるためです。

 そこで、セキネシール工業が提供するのは、電池と電池の間に挟む「断熱する紙」です。耐熱性も兼ね備えており、仮に電池のなかの一つのセルが燃えても、隣のセルへの延焼を防ぐ「延焼防止材」としての役割を果たします。

 取引先である自動車業界は「高耐熱性」や「圧縮性」、そしてEVの軽量化に貢献する「軽量化」を求めており、関根さんは「断熱する紙」がこうした課題の解決につながると考えています。

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