コース: テイラー・ジョーンズのカラーグレーディング

テイラー・ジョーンズのカラーグレーディング

コース: テイラー・ジョーンズのカラーグレーディング

テイラー・ジョーンズのカラーグレーディング

編集されたことに気付かないということは 編集者の腕が優れている証拠であり カラリストにも同じことが言えます 1シーンの中で 見た目が大きく 違っていてはいけません ♪~ カラーコレクションとは 露出などの修正をする仕事です 一方でカラーグレーディングとは 様式を一致させること 一定の美観を与えること 化学的な処理を 施したように見える 映像を作り出すことです 今ではデジタルで処理します 人の頭の中には ある色を補完する 特定の色というものが 存在します そういった色が うまく一致するように強めてやると 極めて心地よい見栄えが できあがります ♪~ カラリストという仕事に 就くことを考えたこともなかった 学生時代は生物学や それに関連する分野に 興味があり 遺伝子を勉強していました 必要単位を満たすために ビデオ編集のクラスを取ったのですが その時から 映画製作というものに 心を奪われ 授業が終わってから 毎日5~6時間も チュートリアルを見て勉強したり カメラやセンサーなど 様々な要素について 出来る限り 学び取ろうとし 常に自分の技術を向上させようと 務めていました “どうすればもっとプロらしく見せられるのだろう” “どうすればより高品質に見せられるのだろう” と考えてばかりいました カラーグレーディングについて知った時は 文字通り 一目惚れしてしまいました 完全に取り憑かれてしまった とでも言えるでしょう カラリストになるまでの過程は まさに自分の成長過程でした 最初はAdobe Premiereの 基本的な機能から始まり そこからColorista 次にMagic Bullet Looksと 呼ばれるソフトへと移りました ただこれは専用のソフトではなかったので 最終的にDaVinci Resolveにたどり着きます Resolveの使い方を学ぶのに おそらく6カ月は費やしたと思います 各種ボタンやすべてのツールの 動作を学びました カラリストになりたいと自分で分かっていたので カラーグレーディングの専門へと移行しました そこで私はアレクシス・ヴァン・ハークマンの “カラーコレクション・ハンドブック”という 本から多くを学びました 彼はこの本の中でカラリストとして必要な 6つの大切なポイントを説明しています 彼が実際に行っている職務の1つ目が コントラストや 露出といった要素を 調整することです こういったものを修正していきます これはカラーコレクション工程の一部です TT:ここで私が行うのは まずコントラストと彩度を 少しだけ上げます そしてホワイトバランスと 露出を適切な状態に調整します これが補正です 2つ目はキーエレメントを あるべき見え方にすることです ここでいう“キーエレメント”とは 肌の色合いなどを指します 色合いの悪い肌では 決して見栄えはよくなりません この映像を見てください すでにさまざまな調整をしましたが その結果として 彼の肌の色合いが 赤紫色になってしまい 見苦しくなりました これを補正して適切な状態に 修正します ここからがカラーグレーディングという 映像様式を一致させる作業です ビンテージ寄りのパリっとした 映像にしてみました 一目瞭然でより暖かみのある 絵になっています たそがれ時の雰囲気です 時には映像がシーンの雰囲気に マッチしないことがあります そこで夕焼けにしてみます より暖かみを出しました 暖かみのあるトーンに 落ち着かせました ここからはトーンをこちらのシーン全体に 引き継いでいきます まずキャラクターに取り掛かります 2人はこのボートの上で座っています あまりたそがれの雰囲気がなく さきほどのトーンが出ていません そこで一致させる必要が出てきます 最初に調整するのがハイライトで さきほどの暖かいトーンを 取り入れます 左の空の部分が ぼやけているので 少し控えめにして 少しだけこの部分に 彩度を取り入れます これで落ち着きました 次は映像に深みを付ける 作業になります 映像そのものだけでなく このキャラクターの感情にも 深みを付けます このキャラクターを見てください ご覧のとおり 彼の表情には苦悩や 痛み、悲しみが見えます まずは彩度の調整から 始めていきます 自分が欲しいコントラストを作ります そこから 照明の調整をして キャラクターの顔に注目が 集まるようにします 次に映像の色合いを 調整して 深みを付けていきます 涼しげな色合いを取り入れて 少しだけ 深夜の悲しい雰囲気を 出してみます それから 壁を照らしている 暖かい光と 窓から差し込む 月明かりという 2つの色のコントラストを 強調します それにほんの少しだけ コントラストを追加して キャラクターを ざらついた感じにしてみます これでキャラクターの感情にも 実際の映像自体にも 十分な深みを 増すことができました 最後に行うのが品質管理です カラリストには従うべき 品質管理基準というものがあります 放映される映像が できたとします その彩度が高すぎたり 輝度が 高すぎたりすると 映像は突き返されてしまいます それでは受け入れられないのです 放映することはできません 制作する映像は 必ず放映基準を 満たす必要があり 品質管理基準に従わなければいけません ♪~ 私がカラーグレーディングや カラーコレクションを 学んでいた時 何度もYouTubeでチュートリアルを検索したら パトリック・インホーファーの “カラリスト・フライトスクール”という 色に関するビデオを見つけました 確かLynda.comにも彼のチュートリアルが あったはずです パトリックはいくつかコースを開講していて 私も受講しました そこである程度の知識を得て 技術的に正しい知識を 身につけ順調に来ていると 感じました ツールの使い方を十分に学んだとしても ある一定のレベルにまでしか到達できない という転換点が存在します そこから先は自分自身による創造的な決断が 頼りになります 私の場合は映像業界で働き 制作アシスタントとして映像制作に 携わりました ここカンザスシティにある会社で インターンとして働きました 仕事以外の時間を使って 色に関してできる限り 学ぶようにしました その時は私は無給だったり ものすごく低予算だったりしましたが 趣味として多くのカラーリングの仕事を 引き受けました こうして私の名前が知られるようになりました 制作アシスタントの仕事をする中で 多くの人と出会いました 多くの撮影監督などとも 出会いました 撮影を手掛ける人たちが“彼のこと知ってるよ” “腕は確かだよ” “一度彼と話してみたら” などと口利きしてくれたことが 自分の現在のキャリアにとって 大いに役に立ったと思います はじめの頃は そうした口コミのおかげで 多くの仕事を受けることができました 私がここまで来た大きな要因として 挙げられることは 当時のカンザスシティにはこの仕事の 専門家がほとんどいなかったことです 私はこの街で生まれ育ったので 地元のプライドというものがあり “自分はカンザスシティ出身だ”と 言えることをうれしく思います 私はこの場所から離れたくありません この街を愛しています 他にもカンザスシティを拠点としている 理由はあります 質の高い仕事を この場所に持ち寄って 皆と仕事をできるようにしたかったのです 思い通りの映像をデザインし さらに良くしていく この街で生まれた作品を 作り出すことに魅力を感じます ♪~ 映像を目にするたびに 最初に考えることは キャラクターの気持ちです カラリストとしての自分にとって 最も重要な要素であり シーンの感情を伝える上で 最も役に立ちます この瞬間における このキャラクターの状況はというと 兄弟である2人は 疎遠で 何かよそよそしい雰囲気が 出ています このシーンから私が 感じるのは 孤独、距離感といったものです そこで頭に浮かび パッとひらめきました こうした寂しげな感情を表すのは 青だと 青から連想する一般的な感情です ですが、カラリストとして だいたいの場合、REDlog Filmを 取り入れます カメラのメタデータか これをREDlog Filmに 変更します ここにあります 映像の彩度がさらに落ちました 前よりも少し明るくなりました これにより映像の良さを 最大限に引き出すために調整すべき場所が はっきりと見えます そこで最初に考えるのが 背景の雰囲気を興味深いものに することです 実際の作業過程で LUTを使ってみることを 話し合いました 結果としてKodak LUTを使うことに 決めました Kodakのフィルムで撮影したようになります それをオンにしてみます するとすぐに 見事な豊かなコントラストが現れ この状態でもかなり いい映像になっています この調整が終わった後で 何をするかというと 彩度を少しだけ 調整します ほんの少しですが 照明に調整をかけます ある程度、自分が考えていた 基本的な色合いの 映像になりました ここから より本格的に キャラクターに取り掛かります まずパワーウィンドウと呼ばれるものを 作成することにより 照明のあたるエリアを 描画、隔離し 照明や色といった 一定のエリアだけ強調します 今回強調するのは 照明です 今、行っている 最初の調整は 本当の微調整で 映像の隅の部分の ボケをわずかに調整します 非常に細かな部分ですが このままでは気になるので 少しだけ手を加え キャラクターの露出を 調整します ここにウィンドウがありますが 私が照明の強く当たる部分 この部分の照明を強調しました このような感じです もう一度同じことをしますが 今度はキャラクターに焦点を当てます この人物がもう少し前に出てくるようにします このパワーウィンドウですが この部分の照明が少し明るすぎます このままではキャラクターに 注意が惹かれなくなるので この部分に グラデーションを設定して 少しだけ照明を落としました そして最後に大切なところですが こちらの前景を少しだけ 目立たせることで 背景にばかり 目がいくことなく 前景のほうに 注意を惹くことができます ではグレーディング前と後の 映像をお見せします この状態から始めて これが完成形です これぐらい違ってきます ♪~ 自分好みに 仕上がった映像が あるとします ただしカラリストがどのような作業を したのかを知ることはできません 秘密にしておきたい 気持ちも分かります どうやっているのかを 公開したくはないのでしょう 個人的にはカラリストの仕事を公にすることで クリエイティブ業界の人々に大きな刺激を 与えることができると思います そこで私は自分が携わった作品で 異なる色使いを見せる映像を作り Vimeoで公開しました 以前、私が携わった “House on Pine Street”という 作品を取り上げました 私が作って公開した映像は いつかのシーンを 切り取ったもので そうしたシーンの 色合いを変えてみせています 私は役者や撮影クルーに見てもらおうと思い 映像を提供したのですが 他の人がその映像をRedditに投稿したことで 多くの人の目に触れ Redditで上位5位に入る 人気のビデオになりました 今では閲覧数が100万回ほどになり 今でも世間に私を知ってもらう よい機会になっています ビデオをネット上の Vimeoに公開し 口コミで広がりました これまでにオーストラリアやクウェートなどの 国でCMの仕事をしたことはありましたが 多くの人がこのビデオを観てくれたおかがで 私の名をたくさんの人に知ってもらい 結果として最高のマーケティングツールに なりました この映像は楽しく作成できました ストーリーがなによりも素晴らしい サイコホラー系の作品です 通常まず私が行うのが コントラストと彩度の調整です そこから 少しコントラストを上げて 彼女の髪の毛などの 細部を浮きだたせる ようにします 彼女の顔に目を引くようにしています それから青を入れます これでティール&オレンジ風の 映像になりました これにより視覚的な色の対比を 映像に作り出します ティールとオレンジは補色関係にあるため 色合いとしての相性が良く 映像が浮き出し 対照をなします こちらのショットですが 悪夢の中に出てくる映像です 夢であることを 際立たせたかったのです 同時に、ここが廃墟と化した 恐ろしい廊下のように 見せたかったのです ここからはLogを調整していきます まずいつも通り 彩度とコントラストを強調する作業から 始めます これではまだ怖さが足りないので 非現実的で悪夢に見えるよう もう少し強調します コントラストを もう少しだけ強く ドアの周りの影を 引き立たせます ここでは手前にあるドアや 手前の廊下の部分といった 前景が目立ってしまいました 本当に注目してほしいのは 廊下の中央に浮かんでいる 実際のドアなのです そこで照明を分離させるようにします 照明をすべて落としていくことで 中央が引き立つようにします ここでは適切な色合いではなくなりました 恐ろしい雰囲気を出したいのです この青の色合いは映画全体を通して 使われる恐怖の色です そこでこのショットの青の色合いを 強調します そして このドアは元々濃いオレンジ色でした ここは目立たせる必要があります 一旦戻って ドアの赤色を分離して 青の中に浮かび上がる ようにします こうすることで このシーンにおいて このドアが一際目立つようになり 誰もがここに注目します ♪~ カラリストが直面する壁があります 画像調整に決して満足しないということです 一生かけて映像を 調整し続けても “完璧”と言える状態にはたどり着けません 試行錯誤で学ぶ以外にありません 実験したり思い付いたままいじくっていると カメラの種類により色に与える影響が 変わることを知るようになります Photoshopにも 数多くのリタッチの技法が 存在します 多くの写真家が使う 色々なスタイルを見て つぶさに観察します 初めはこうしたことが 大いに勉強になります 技術的な要素に関していえば 色々なカラーコレクションの ハンドブックやカラーコレクションに関する テキストなどの中から 多くを学べます カラリストとして知るべき あらゆる技術を 理解する上で 非常に役立ちます そこから先はひたすら 自身の創造性のままに 先を目指していくのです

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