地球外サンプルから、炭素数6のブドウ糖が見つかったのは史上初だーー。
NASAは火曜日(現地時間)、小惑星の塵を詳しく分析した最新成果を公表した。生命の起源を探る研究にとって重要なヒントとなり得る物質が次々と見つかったという。生命のエネルギー源となる糖類、正体不明のガムのような物質、さらに超新星由来とみられる星屑まで、多彩な“宇宙の成分”が検出された。
これらの試料は、2020年にNASAの無人探査機「Osiris-Rex」が小惑星ベンヌの表面から採取し、2023年に地球へ届けたもの。現在、世界中の研究者がこの貴重なサンプルを解析し、太陽系が生まれた頃の環境を探ろうとしている。
ただし、見つかった化学物質が“生命そのもの”を意味するわけではない。NASAゴダード宇宙飛行センターでサンプルリターン計画を率いる主任科学者Daniel Glavin(ダニエル・グラビン)氏は、米CNETの取材に対し次のように語っている。
「今回確認されたのは、生命を形づくるための“材料”であって、生命体ではない。ジグソーパズルのピースはそろいつつあるが、まだ絵柄は完成していない状態だ」
糖類の発見を主導したのは、東北大学の古川善博氏らの研究チームだ。地球外の試料から炭素原子6個のブドウ糖が見つかったのは初めてで、生命が利用する炭素源・エネルギー源として広く知られる分子だ。
また、炭素数5のリボースも確認されたが、こちらはこれまでに宇宙由来のサンプルで検出例がある。
NASAの発表によると、糖が見つかったこと自体が生命の証拠になるわけではないものの、ベンヌからはすでにアミノ酸、ヌクレオベース、カルボン酸なども報告されており「生体分子を構成する基本的なパーツが、太陽系全体に広く存在していたことを示す」という。
古川氏は声明で「ベンヌの試料からは、DNA・RNAの材料となるヌクレオベースがすべてそろっており、今回リボースが見つかったことで、RNAを合成するための要素が揃ったことになる」と述べた。
研究成果は科学誌Natureに掲載され、研究者らは生命の起源に関する「RNAワールド仮説」を後押しする結果だとしている。この仮説は、複雑な生命が出現する以前、RNAを中心とした原始的な世界が存在していたとするものだ。
グラビン氏は「太古の太陽系には、生命の原材料が至るところに散らばっていたことが確実に言える」と強調する。
「だからこそ、地球以外でも生命の化学的な痕跡を見つけられる日が来ると、以前より強く確信するようになりました」
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ベンヌのサンプルから、生命に不可欠な糖を日米チームが検出した。
NASA/Goddard/University of Arizona/Dan Gallagher
ベンヌのサンプルからは、生命の材料となる糖類のほかにも興味深い成果が報告されている。NASAエイムズ研究センターのScott Sandford氏とカリフォルニア大学バークレー校のZack Gainsforth氏は、Nature に掲載した論文で、これまで宇宙の岩石では確認されていなかった「ガムのような物質」を発見したと述べた。
この物質は、採取当初は柔らかく弾力があったが、時間とともに硬くなったという。成分は窒素と酸素を多く含む高分子状の物質で、NASAは「生命を生み出す化学反応の前段階となる可能性がある」と重要視している。
Sandford氏は「この奇妙な物質は、ベンヌで起きた最初期の化学変化を示しているのかもしれない。太陽系形成のごく初期に遡る“始まりの始まり”を見ている感覚だ」と説明する。
同じく火曜日に掲載された別の Nature 論文では、NASAジョンソン宇宙センターのAnn Nguyen氏らが、太陽系よりも古い星に由来する塵を分析した結果を発表した。サンプルには、予想を大きく超える量の超新星起源の星間塵が含まれており、これまで他の宇宙試料で確認された量の6倍に達していた。
Nguyen氏は「これらの粒子が変質せず残っていたことは驚きだ。母天体の内部でも保存された“太陽系以前の物質”の多様性を示している」と述べている。
Osiris-Rexミッション全体の運用は、NASAゴダード宇宙飛行センターが担当した。
この記事は海外Ziff Davis発の記事を4Xが日本向けに編集したものです。
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