中世より千年の都・京都の中心部にあり、伝統仏教最大宗派の一つである包括宗教法人『錦応山燈念寺派』。燈念寺派の中枢組織である宗務総合庁がこの小説の舞台。著者はここに燈念寺派という宗派をフィクションとして設定した。その中枢組織に属する幹部僧侶たちが、現世利益の欲得、己の私利私欲に捉われ、権力に執着し、確執と駆け引きを繰り広げる。衆生救済とはかけ離れた、僧侶間での権謀術数の様相、宗派の内側の現世世界をテーマに取り上げている。実に興味深い。 本書は、「小説新潮」(2023年4月号~2024年1月号) に連載された後、加筆・修正され、単行本が 2024年10月 に刊行された。 この小説は、二部構成。 第…