ちょっと気になってたことに反応いただけたのでまとめさせていただきました。(1) カンゴームの変節の前提には何があるのか(本当にゴーストの眼由来の行動方針が失われたからなのか、だとしてゴーストの行動方針はどこまで旧カンゴームを縛っていたといえるのか、など設定から読み取りきれないことは多い) (2) フォスは本当に「他者から愛されたいと思っている人物」と解釈してよいのか(実はそうでもないのではないか?) について述べています。
書評家・作家・専門家が《新刊》をご紹介! 本選びにお役立てください。 (評者:東畑 開人 / 臨床心理学者、白金高輪カウンセリングルーム 主宰 http://stc-room.jp/ ) はじめに断っておく。広い読者に向けられた本でもあるけれど、ひとりの心理士として書きたい。この書評の題は、そういう思いからつけたものだ。 私は信田さよ子を知らなかった。不明を恥じる。だけど、私だけじゃない、と言い訳したくなる。誰も信田さよ子を知らなかったのではないか。 もちろん、みんなが信田さよ子を知っている。それもわかっている。彼女はおそらく、日本で最も有名な心理士だ。アディクションとDVの第一人者であり、数えきれないほどの本を書き、多くの良き読者がいる。 それでも思う。信田さよ子は孤独ではなかったか。この25年間、彼女はたった一人で体系を編み上げ、オルタナティブな臨床心理学を構築してきたのではなかっ
24 May.2025山崎広太 身体/言語ゼミへの推薦コメント|岡﨑乾二郎 27 Apr.2025new genショーケースにおける身体表現の探索と挑戦|権祥海(東京都現代美術館学芸員) 23 Apr.2025インターウニ勉強会♯2レポート|宮下寛司 16 Apr.2025 蓬 髪 《幽閉の劇場と8感のラップ》レビュー/小説|河野咲子 28 Mar.202520250209終わらないダンスのために|山﨑修平 13 Jan.2025後編|クリエーション記録《ダンスタイムカプセル》滞在制作 @芝の家|木村玲奈 11 Dec.2024前編|クリエーション記録《ダンスタイムカプセル》滞在制作 @芝の家|木村玲奈 24 Sep.2023都市へのトランジットな介入としてのフェスティバル|宮下寛司 22 Apr.2023WWFesにおける〈らへん〉の系譜|渋革まろん 10 Jan.2023under t
売野機子『インターネット・ラヴ!』評です。別の場所にこっそり載っている文章ですが、よく書けたと思うので、ちょっと修正してブログにも載せておきます。 インターネット・ラヴ!【電子限定特典付】 (onBLUE comics) 作者:売野機子 祥伝社 Amazon 1.『インターネット・ラヴ!』の設定の背景にあるもの――忘却できない傷つき・痛み 売野がこの作品において、インスタや韓国、ネイリストのような「オシャレ」なもの、あるいは「社会に包摂されたセクシャルマイノリティ」のようなものをベタに肯定して描いているわけではない点にまず注意を促したい。 では、それらの現代的なモチーフにどのような機能を持たせているのか? この問いについては、インターネットとマイノリティとの間の関係から考える必要がある。解説しよう。 かつてインターネットはマイノリティにとっての希望だった。人生の敗者復活戦の場だった。 今・
昨今はオープンワールドのゲームがたくさん登場しており、高く評価される作品も少なくない。とはいえ、それらの作品を遊んでいると「もっとこういうもの・ことがあれば」と思うことも少なくないのである。 あわせて読みたい『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』におけるファストラベルのロード画面は「ブレス オブ ザ ワイルド」とは異なるアプローチでデザインされていた かつて、『ホグワーツ・レガシー』に関する記事で「プレイヤーの行動に対して適切なリアクションを返す」ことがゲームの魅力のひとつではないか、と書いた。オープンワールドというデザインを採用した作品はプレイヤーができることが多く、しかしそれにきちんと反応がないと肩透かしを食らってしまうという問題がある。 そのようなことを考えていた折に、『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』(以下、「ティアーズ オブ ザ キングダム」)が発売さ
はじめまして。今回noteの執筆を担当する岸裕真です。 今回のnoteでは、僕がいま注目しているフランシス・ベーコンと、当時彼の周辺にあったイメージにまつわるテクノロジーについて簡単なコラムをご紹介できればと思います。 でも、一体なぜいまフランシス・ベーコンなのでしょうか。 ベーコンは独特なうねる肉体の絵画表現により、ピカソと並び20世紀の重要なアーティストとして知られています。 当時のアートシーンが抽象表現主義に沸き立つ中、独自の視点で具体表現主義的な絵画表現を追求していった彼の根底には、当時「絵画を殺した」写真というテクノロジーの存在がありました。 特異な表現によって絵画史を更新したベーコンが、どのように写真に対面していたかを考察することで、これからのテクノロジーとアートの関係性を探ることができたら。そんな思いで執筆しています。 それではまずベーコン自身について書いていこうと思います。
幾原邦彦オリジナル作品として2011年7月にTV放送を開始した『輪るピングドラム』。謎が謎を呼ぶ展開、個性豊かなキャラクター、魅力的な音楽も話題となった本作の劇場版『RE:cycle of the PENGUINDRUM』「[後編]僕は君を愛してる」が2022年7月22日(金)に公開される。 2022年、SNSで可視化されたこの時代に『輪るピングドラム』を観るということにはどんな意味があるのか。考察する。 ※この記事は2022年5月26日発売の『CONTINUE』Vol.77に掲載された記事を転載したものです。 『輪るピングドラム』との邂逅 TVシリーズ『輪るピングドラム(以下、ピンドラ)』は大学を卒業した年に観た。2011年。1988年生まれ、2007年に大学に入学した私の世代は、リーマン・ショックを受け訪れた就職氷河期の波を乗り越えたのも束の間、卒業直前に東日本大震災が起き、さらに混乱
B’zのファンでなく『ultra soul』や『イチブトゼンブ』などのヒット曲数曲しか知らないという人には、B’zは“陽”なイケイケなバンド、あるいは男らしい硬派なバンドだったりするだろうか? しかし実はヴォーカルである稲葉浩志さんの書く歌詞はものすごく陰があって、「男性はかくあるべし」というジェンダー規範から自由だったり、抗っていたりするんだ…… そんなことをツイートしていたらこちらでの執筆の機会を頂いた。筆者は日本社会にある女性への抑圧や男女格差に耐えかねて、数年前から海外に渡って奮闘中のB’zファンだ。稲葉さんの歌詞がいかに“マッチョ”でないかを、「歌の主人公の弱気さネガティブさ」「ジャッジメンタルでなく多様性を尊ぶ姿勢」「生活に根ざし感情を大切にする視点」の三つの観点から話そうと思う。 最初にお断りしておきたいのだが私にとってB’zはアルバムを何枚も持っていて好きなバンドではあるけ
ゲームレビューの営みは人間の不思議なエネルギーで駆動する。 遊ぶのが好きなら読み書きの時間で実際にプレイした方が楽しめるし、感触を知りたいだけならゲーム配信や実況動画の方が役立つ。発売前後にメディアが一斉公開するものならまだしも、数ヶ月、数年、数十年経った作品でも読み書きされるのは人間がつねに共感を欲し、そこに深い意味をもとめざるをえないからだ。 この記事では、ゲームレビューの読み書きをとおして感じてきた固有の難しさをまとめる。ひとつひとつにもっと掘り下げるべき奥深さがあるが、僕が目指したのは見取り図の作成だ。 結論を先にいうと、ゲームレビューを書くのがなぜ難しいかには以下の3つの要因がある。 プレイングの困難:ゲームを遊ぶことは作品ごとやジャンルごとに一定量の学習を要求し、課題構造がそのプレイングを可視化するため巧拙の誤魔化しがきかない 文章表現の困難:動画媒体のコンテンツが人気を博して
2024年12月1日に開催された、文学フリマ東京39に行ってきた。 文学フリマ初のビッグサイト開催であるが、それを理由に行ったわけではない。 ここ数年文フリからはご無沙汰で、今回も当初は行く予定がなかった。TLから、近く文フリがあるのだなあとは思ったが、いつやるのかもそれほど把握していなかった。 ところが、前日の夜、急に塚田君から「明日、文フリに行く」旨のメッセージが入っていたのである。実のところ、そのメッセージを読んだ時でさえ、そんな急に言われてもなあ、という感じだったのだが、10年近く会っていなかったことを思うと、このチャンスを逃すとまた当分会えないのでは、ということで行くことにしたのである。 全然行くつもりのなかった文学フリマとはいえ、いざ行くとなれば、寄りたいところは色々とあがってくるもので、それでも回|れたのは最低限の範囲でしないのだが、いくつか買った本があるので、感想をボチボチ
※本記事は、『BLACK PAST vol.2』(2012)所収の「「95年」と桃果の倫理──幾原邦彦『少女革命ウテナ』、『輪るピングドラム』論」を一部加筆・修正のうえ、転載したものです。 文:籠原スナヲ 幾原邦彦が監督したテレビアニメ『少女革命ウテナ』(1997)と『輪るピングドラム』(2011)には、大きな違いがある。端的に言えば、『ウテナ』では周縁に追いやられてしまった問題が、『ピングドラム』では物語の中心に置かれているのだ。その問題とは、人間が「かけがえのない」(=交換不可能な)存在であると同時に「かわりがきく」(=交換可能な)存在であることをめぐる問題である。 本論では『ウテナ』と『ピングドラム』を対比的に検討しつつ、この問題の核心へと迫っていく。 ただし、本論が注目するのは、天上ウテナや高倉晶馬といった各作品の主人公ではない。そうではなく『ウテナ』における桐生七実と高槻枝織、『
アジア初 日本の哲学者 柄谷行人氏、2022年バーグルエン哲学・文化賞を受賞現代哲学と政治思想に大きく貢献した先駆的な思想家 バーグルエン研究所(米国 カリフォルニア州ロサンゼルス)は本日、バーグルエン賞審査委員会が、卓越した日本の哲学者、文芸評論家である柄谷行人氏を2022年のバーグルエン哲学・文化賞の受賞者に選出したことを発表しました。同賞は、急速に変化していく世界のなかでその思想が人間の自己理解の形成と進歩に大きく貢献した思想家に毎年授与されており、賞金は100万米ドルです。アジア人初の受賞者となる柄谷氏は、哲学、文学理論、美学、言語学、経済学、政治、東洋と西洋、過去と現在を横断する稀有な思想家です。同賞審査委員会は、「柄谷氏は現代哲学、哲学史、政治思想に対する極めて独創的な貢献をした。混迷するグローバル資本主義と民主主義国家の危機、めったに自己批判が伴うことのないナショナリズムの復
眠りに落ちる前の最後の九分間がいちばん好きだった。 現実と幻想が交錯する瞬間を待ち望んでいた。その一瞬のために起床し、一日を生き抜く。私のいちばんの夢は一日じゅう眠ることだった。実現したらなんとすてきだっただろう! でも、その夢はゆっくりと、しかし確実に、失せていった。まるで誰かが私の頭の中をあさるように、何も残らなくなるまで、すこしずつ……。 今また私は眠らなければいけない。眠る必要なんてもう感じていないのに。鏡に自分の顔を映し終わり、私はいつもの錠剤に手を伸ばした。妙な話、いつも無心でまとめて飲み込んでしまうので、個別の薬がどのように作用しているのか、私はわからない。 なんだか錠剤をもっとよく眺めたくなってきた。触りたい。指のあいだに挟んで、噛んでみたい。少しでも時間を稼げるならなんだってする。なめらかに隆起した赤いカプセルが私を見つめている。半透明の濁ったフィルムに覆われているものの
どうも。 今日はこういう話をしましょう。 3日ほど前に書いた大瀧詠一さんの記事のラストで僕はこういうことを書きました。 はい。1981年3月21日、大瀧詠一の「A Long Vacation」とYMOの「BGM」。この2つの傑作アルバムが同日に、元はっぴいえんどのふた組によって生まれてしまった。のちに、2つの全く別の方向で、長きにわたって日本の音楽シーンに多大な影響力を持つにいたってしまった。僕はこの快挙をもって、日本ではっぴいえんど史観なるものが決定づけられた、と思っています。 もし、仮にこれが、大瀧さんだけ、もしくは細野晴臣さんのYMOの片方のみの成功に終わっていたら、この史観は生まれていなかったと思います。しかしこれが大瀧さん、細野さんの両者に出てしまった。それこそがはっぴいえんどの日本のポップス史における最大の影響力となってしまったように思います。 そこに加えて、松本隆さんは作詞家
「頭がいい人は難しいことをバカにでもわかるように話せる」という話を聞いたとき、難しいことにも色々あって、簡単にできるものとできないものがあるだろうと思ったのですが、難解な言葉が並んだ哲学書はどっちなんだろう、と思いました。東さんは平易な言葉で要約するのがとても上手い印象がありますが、東さんの手にかかれば、ほとんどの哲学書は高校生にも分かる言葉でパラフレーズされてしまうのでしょうか?(奈良県・20代・男性・非会員) ご質問ありがとうございます。結論からいうと、哲学は前者、つまり「簡単な言葉で表現できるもの」だと思います。ただ、簡単な言葉で表現したら簡単になるかといえば、そう簡単なものでもない。 ぼくはしばしばいうのですが、哲学は観光ガイドに似ています。旅行の前にガイドを読む。どこに行くとなにがあって、それはどんなもので、そこに行くにはこのバスを使えとか地下鉄のほうがいいとか時間がかかるから気
"We were young, we were foolish, we were arrogant, but we were right." 「我々は若く愚かで傲慢だったが、しかし正しかった。」 -Abbie Hoffman小山田圭吾は四半世紀前に行った「いじめ加害の回顧」を元に糾弾され遂にステートメントを公表し、また五輪開会式作曲担当を辞任した。かつて若く愚かで傲慢だった男は中年になり、五輪という国家主義で粉飾した薄汚い資本主義の欺瞞に満ちた祭典に魂を売り堕したが、ポストフリッパーズギター、コーネリアスこと26歳の反逆児 小山田圭吾によって無事それは阻止されたのである。 結果的に90年代の(露)悪趣味ブーム、鬼畜系と呼ばれるような虚無主義による静的反体制ムーブメントは時空を超えて虚ろな態度で大量消費文化に迎合する邪悪な中年男性の台頭を抑えたが、同時に現代に生きる人々はそのショッキング
「とんでもスキルで異世界放浪メシ」江口連による同名ライトノベルが原作のTVアニメ。異世界に召喚されたサラリーマン、ムコーダは、「ネットスーパー」という一見冴えない固有スキルを授かるが、このスキルで取り寄せた食品が、異世界では……!? Prime Video、ひかりTVにて独占配信中。Photo: © 江口連・オーバーラップ/ MAPPA /とんでもスキル 衝撃のアニメオープニングパロディも話題を呼んだマクドナルドのチキンタツタと「ONE PIECE」のコラボ。昨今のアニメブームも後押しとなり、こうした“現実世界にアニメが現れる”コラボ商品はますます増えてきている。 元来、アニメ内に登場する実在商品といえば、権利的な問題もあり、「マクドナルド」なら「ワクドナルド」に、「お~いお茶」なら「は~いお茶」にといったように、パロディとして描かれることが多かった。それが一体いつから、実際の商品などがそ
✑ 高島 鈴 アナキスト/フェミニストの高島鈴が、社会現象級の大ヒット作を正座で熟読。マンガと社会を熱く鋭く読み解く、革命のためのポップカルチャー論をお届けします。最終回となる第3回は、累計発行部数が世界で1億部を超え、今年完結を迎えた諫山創『進撃の巨人』(2009~21年/講談社)。この歴史に残る作品は、いかに歴史を描いたのでしょうか。 地獄を選ぶという自由 エレンはタイバー家の、もといマーレと世界じゅうからの宣戦布告を聞き届けると、その場で巨人化し、全ての破壊に踏み切った。いわば歴史劇に熱狂していた人びとの前で「パラディ島の悪魔」の実物を演じてみせたわけである。エレンの要請によってこの戦闘に参加させられたパラディ島の面々は、和睦の道をここに喪失した。 さて、このときエレンは何を考えていたのだろうか【17】。タイバー家の演説の裏側で、もう一つの動きがあった。マーレに潜伏したエレンが、かつ
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています 負けヒロイン側のアラサーを描くと聞いたときは死ぬかと思った(『ハイスコアガール DASH』1巻より) 何度でも言う。人類はかつてから「女の子の二択」で苦しむ性質がある。ティファとエアリスとか。ビアンカとフローラとか。 マンガ『ハイスコアガール』本編は、ゲームセンターを中心に大野晶と日高小春への恋愛で悩む少年・矢口春雄(ハルオ)を描いた作品だった。当時のファンは大野派と小春派に分かれ、連載が進むたびにもん絶していたものだ。 ハルオは大野を選んだ。小春は壮絶な失恋をした。本編ではハルオへの恋心にさよならを言うかのような爽やかなシーンで幕を閉じた。ぼくは圧倒的小春派だったので、そりゃ大野さんにいくだろうよとうすうす分かりながらも応援していたが、諦めた小春のすがすがしい顔で涙して、全てを受け入れようとしたものだ。 ところが続編のマンガ『ハイ
TVアニメ『スキップとローファー』(以下スキロー)のOPについて、従来のダンスOP・EDと比較しながら、その魅力に迫ります。 www.youtube.com 絵コンテ・演出:出合小都美 作画監督:天野和子 近年のダンスOPでまず思いつくのは『彼女、お借りします』のOP。1期2期どちらもダンスが取り入れられており、スマホのカメラに向かって踊っているような演出が為されています。 かのかりopのこの感じ好きw#彼女お借りします pic.twitter.com/5f71aqwUwk — 🍀RyoRyo🍀🌟 (@RyoRyo70333980) 2020年8月6日 彼女お借りしますop このシーン何回見てもカワイイな!🫠#彼女お借りします pic.twitter.com/tB7HAiETd9 — ぽめしぃ (@pome_cgkstuy) 2022年8月1日 『ヲタクに恋は難しい』のOPもスマホ
異世界ものコンテンツに見られる長くて特殊なタイトルは今、冷凍食品やコンビニ商品にも浸透しつつある。その特徴は、「看板」の役割を果たすだけでなく、内容をも語り示す「透明性」にあるという。京都市立芸術大学特任講師の谷川嘉浩さんが論じる。 (『中央公論』2022年2月号より抜粋) 国民文学としての「異世界もの」? ゼネコン勤めの37歳独身男性の三上悟は通り魔に刺され、薄れゆく意識の中で無機質な声を聞く。次に意識を取り戻したとき、自分が異世界でスライムという魔物に生まれ変わっていることに気づいた。 カタリナは、家柄のよさと親の溺愛で高慢な少女となったが、転倒した際に現代社会で女子高生だったときの記憶を思い出し、今生きているのが、当時遊んだ乙女ゲームの世界であり、ゲーム内で破滅へと向かう悪役が自分であることを悟る。 それぞれ、2013年と14年に小説投稿サイト「小説家になろう」から生まれた『転生した
(追記2023年6月) sakstyle.hatenadiary.jp Kindle版について(Amazon) 一番手に取りやすい形式ではあるかと思います。 ただ、エゴサをしていて、レイアウトの崩れなどがあるというツイートを見かけています。 これ、発行者がちゃんとメンテナンスしろやって話ではあるのですが、自分の端末では確認できていないのと、現在これを修正するための作業環境を失ってしまったという理由で、未対応です。 ですので、本来、kindle版があってアクセスしやすい、っていう状況を作りたかったのですが、閲覧環境によっては読みにくくなっているかもしれないです。申し訳ないです。 pdf版について(BOOTH) ペーパーバック版と同じレイアウトのpdfです。 固定レイアウトなので電子書籍のメリットのいくつかが失われますが、kindle版のようなレイアウト崩れのリスクはないです。 また、価格はk
『現代詩手帖』のふたつのアンソロジー特集を読んだ。8月号が「現代詩アンソロジー2000-2009」、同じく9月号は「現代詩アンソロジー2010-2019」であった。所収作品は、アンソロジーの常として偏りがあるのかもしれないし、不足もあるのかもしれないが、おおむね楽しく読むことができた。のではあるが、同時に掲載されている、選者4名――瀬尾育生・野村喜和夫・小池昌代・蜂飼耳――によるふたつの「討議」、すなわち「二〇〇〇年代、詩に何が起こったのか」(8月号)、「10年代から現在へ――いま、詩は」(9月号)を読むあいだ、幾度となく、あの馴れ親しんだ「嫌な気分」に襲われることにもなった。ひとことでいうなら「何度これが繰り返されるのか」という脱力感・徒労感、すべてのひとびとが記憶喪失に陥っているのではないかという感覚、である――こういった体験には俳壇であれ歌壇であれTwitterのタイムラインであれ、
畑中良輔 『日本名歌曲百選 詩の分析と解釈』(2002) 。 古典的な日本語歌曲を題材にして詩として解釈・解説するものだが、いまだに見るべきところがある。以下の引用を見よ! 日本歌曲は、日本語で書かれているために、「当然、意味は分かるはずだ」と決めてかかってしまう傾向があります。そして、実は詩の本意をよく理解していなかったり、特にはまったく誤解したままで、歌ったり聴いたりてしまうという結果になりやすいのです。 見慣れない、聴き慣れない語が用いられているというくらいのことでしたら、辞書をひいてみることで、おおむね解決できますが、古語が用いられていたり、比喩をはじめ、対句、押韻、倒置文といった修辞技巧が駆使されていたり、古典のさりげない引用があったり、さらに、時代背景との関わりの中でとらえなくてはならないことがあったり、などといった場合ですと、理解しようとしてもなかなか思うにまかせないことも出
【※】本記事は『THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!』への致命的なネタバレを含みます。未見の方はご注意ください。 『THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!』がその前作であるTVシリーズを含め、画面の中に描写されているオブジェクトが比喩的な、あるいはほとんど直接的ともいえるくらいに劇中の出来事を補足し、描写していることは、比較的知られていることかと思います。知られていないということであれば後述します。 このTVシリーズおよび劇場版アイマスの演出を担当した高雄統子氏が監督・シリーズ構成を務めた『アイドルマスター シンデレラガールズ』ではそうした演出がさらに進んでいったことも知られた事実でしょう(デレマスのアニメにおける時計の針の位置など、気になる方は検索しておくとよいかもしれません)。 ですが、TVシリーズに比べ、この劇場版はあまり数多く言及されて
セシリア・ワトソン(著)、萩澤大輝 (訳)、倉林秀男(訳)『セミコロン かくも控えめであまりにもやっかいな句読点』(左右社) 世の中には読んだほうがいい本がたくさんある。もちろん読まなくていい本だってたくさんある。でもその数の多さに選びきれず、もしくは目に留めず、心の糧を取りこぼしてしまうのはあまりにもったいない。そこで当欄では、書店で働く現場の人々が今おすすめの新刊を毎週紹介する。本を読まなくても死にはしない。でも本を読んで生きるのは悪くない。日刊SPA!で書店員による書評コーナーがスタート。ここが人と本との出会いの場になりますように。 いきなり個人的な話で恐縮だが、私は英語が好きではない――しかし外国文学を読むのは好きだったし、それを批評するのも楽しかったため、英文学の修士号までとっていたりする……実情は就活に失敗してどうにか滑り込めたのが内部進学での院進だっただけで、とにかく私はでき
私たち佐賀県民は、アニメ「ゾンビランドサガ」の世界の中にいる。作中の風景は県内に実在し、そこに自分の姿を想像することもできる。きっと佐賀県民ならではの楽しみ方だ。タイトルから佐賀を冠し、登場人物は「佐賀を救う」と繰り返すのだから、もはや佐賀はもう一人の主人公と言える。 これほど地域色を全面に押し出しているのに、佐賀をよく知らない人も置き去りにしない魅力がある。ゾンビがアイドル活動で佐賀を救うという突飛な設定と個性際立つキャラクターがギャグを満載にする一方、適度な謎を含むシナリオに声優陣の演技と歌、粒ぞろいの楽曲が掛け合わされ感動を呼ぶ。実際の人間の動きを取り込むモーションキャプチャーを駆使したアニメーション技術にも驚かされる。人気が出ないはずがない。 「武士道と云ふは死ぬ事と見付けたり」とは江戸中期の佐賀藩士・山本常朝による「葉隠」の一節。国のための死を賛美するものと戦後は禁書扱いも受けた
いきなりですが、以下をお読みください。 故人西辞黄鶴楼 烟花三月下揚州 孤帆遠影碧空尽 唯見長江天際流 李白『黄鶴楼送孟浩然之広陵』 上記の作品は、有名な漢詩です。 これを読んで、どう感じますか? 「どう感じるかと言われても・・・」 「・・・“わからない”」 そう思いませんでしたか? では、今度はたとえば、漢文のおもしろさを知っている側になったとして考えてみてください。「漢文の鑑賞をもっと広めたい、漢詩の世界を伝えたい!」という場合、 「漢文は難しくてわからない」という学習者側の意見に対し 「まずは読み方、読むために必要な書き下しの方法や、押韻など使われている技法の鑑賞ポイント、作者について、時代背景などを噛み砕いて知ってもらおう」 と考えるのは妥当なことではないでしょうか? しかし、そんなところに、以下のような意見が溢れます。 「芸術というものは、文法や理屈で鑑賞するものではない!」 「
「過去にしがみついて前進するのは、鉄球のついた鎖をひきずって歩くようなものだ。」 これは20世紀米国の小説家ヘンリー・ミラーの名言である。 「過去に固執してはいけない。そこから離れて、何か新しい事を始めてみよう」という意味合いだが、そんなことは無理。過去という鎖を外す事は出来ない、束縛する中指の鎖である。 時間の流れは不可逆的であり、歳を取ってしまうと手に入れられないモノ。 それは青春 それは制服デート それは学校からの帰路、夕焼け色に輝くきみの笑顔 何一つ手に入れる事が出来ず、何もかも経験する事が出来ず、土手下にあるプランターをどかしたらワシャワシャ動き出す蟲のような存在だった学生時代。 今では灰色の社畜生活を送り、心身ともに疲れた時に「THE・青春」を謳歌している学生さんを観た時は無性に泣きたくなってしまう。 「あれは、僕がどう足掻いても手に入らないもの」 その現実をまじまじと実感して
荒木飛呂彦さんの漫画『ジョジョの奇妙な冒険』の第9部「The JOJOLands」が、2月17日(金)刊行の『ウルトラジャンプ』2023年3月特大号(集英社)で連載開始された。 先月号の次回予告ページでは「これはひとりの少年が、亜熱帯の島々で、大富豪になっていく物語───。」と告知されていた本作。 新章の連載開始にあたって、筆者は久しぶりに『ジョジョの奇妙な冒険』第1部「ファントムブラッド」の原作漫画とTVアニメを見返した。 改めて思うことは、いつだって『ジョジョの奇妙な冒険』は、この辛く厳しい現実に立ち向かうため、気高く生きていくための勇気を与えてくれるということだ。 ※この記事には、漫画『ジョジョの奇妙な冒険』のネタバレが含まれています。ご了承ください。 目次 1. 勇気と知恵で困難に立ち向かう『ジョジョの奇妙な冒険』2. シリーズを跨ぎ受け継がれていく『ジョジョ』のテーゼ3. 現代社
記事:筑摩書房 新たな富野由悠季像を浮かび上がらせる画期的評論、ついに刊行! 書籍情報はこちら 間違いなく、藤津亮太の主著であり、代表作の一冊となるであろう。1998年に記者として富野由悠季を初めてインタビューしたときに始まり、2000年には氷川竜介とともに富野由悠季『ガンダムの現場から――富野由悠季発言集』を編み、富野作品の解説やムックなどを多数執筆し、『「ガンダム」の家族論』構成などで富野と密に接し、最初の単著『「アニメ評論家」宣言』(2003、増補改訂版2022)、『アニメと戦争』(2021)などで富野論、ガンダム論を展開してきた藤津が、満を持して、一冊丸々富野由悠季を論じる。 これほどの影響力と知名度を誇るにもかかわらず、これが最初の富野由悠季に関する単独の著者による研究・評論書なのではないだろうか。夏目漱石の研究書の数を考えれば、信じられない思いがする。 集団で作られる商業芸術の
“コンセプトカフェ+百合”版『高慢と偏見』 「コンセプトカフェ」には普段行きますか? 人によっては聞きなれない「コンセプトカフェ」。略して「コンカフェ」とも呼ばれますが、これはその名のとおり、何かしらのコンセプト(特定のテーマ)を土台にして運営されているカフェのこと。わかりやすい事例では「メイドカフェ」や「執事カフェ」のように、店員のコスプレをともなうカフェがあり、オタク系の界隈と相性がいいです。 ただ、最近はコンセプトカフェもどんどん多様になり、従来的なオタクの枠を大きく超えたテーマのカフェも増えているそうです。企業IPを活用したコンセプトカフェもあったり、商業的にも手を出しやすいのでしょうけど、昔ながらの細々とやっている小さなコンセプトカフェはどれくらい生き残れてるんだろうか…。 今回紹介するアニメシリーズも、コンセプトカフェを舞台にした作品です。 それが本作『私の百合はお仕事です!』
VISVIM 2000年設立。デザイナーの中村ヒロキが世界中を旅してインスピレーションを得た伝統工芸品や、受け継がれてきた技術を独自のフィルターを通して表現したクラフト感のあるプロダクトで人気を博す。そのタイムレスなモノづくりで国内外に多くの熱狂的なファンをもつ。 イザベラ・バードの苦言河毛 明治の初め、1878(明治11)年にイザベラ・バードというイギリスの女性の旅行家が日本に来て、同年の6月から9月までの3カ月、通訳兼従者として雇った伊藤鶴吉を供として、東京を起点に日光から新潟県へ抜け、日本海側から北海道に至る北日本を旅したんですね。そして10月から神戸、京都、伊勢、大阪を訪ねている。こうした体験を、1880(明治13)年、『日本奥地紀行』という本にまとめています。で、そのなかでバードは、基本的には日本人と日本の文化に好意的なんですけど、日本人の洋装に関してはボロクソ、まったく似合わな
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