「草原に浮かんだ蜃気楼(しんきろう)」。10年以上前、モンゴルを仕事で訪れた時、郊外から首都ウランバートルの全景を眺めた感想だ。 浅い緑色の草原のかなたの盆地に、初夏のかげろうで揺らめく建物は本当の街なのか、幻覚なのかわからないほどに神秘的だった。13世紀にチンギスハンが築いた人類史上空前の大帝国がついえてから数世紀を経ても、帝国の片りんが残っているようにも感じた。 今回、訪れたウランバートルは「草原の蜃気楼」からバブルに沸く近代都市にすっかり姿を変えていた。20階建て以上のビルが立ち並び、郊外にはまばゆいばかりの豪華なマンションが続々、建ち上がっていた。 道は朝夕のラッシュ時には車で埋め尽くされるが、走っているのは日本車、韓国車にドイツ車や時折、イタリア製の超高級車も交じる。いったいこの国に何が起きているのか。 答えは首都ではみつからない。開発が始まったばかりのオユ・トルゴイ、タバン・ト