2025年10月8日の開業を控えたイオンモール仙台上杉。東北大学雨宮キャンパスの跡地に誕生するこの都市型ショッピングモールは、仙台の中心部に新たな賑わいをもたらす一方で、交通渋滞や周辺環境への影響も懸念されています。
今回は、このイオンモール仙台上杉について、施設概要から交通予測、そして地域のまちづくりへの影響まで、詳しく分析してみました。
施設概要
基本情報一覧
| 項目 | イオンモール仙台上杉(建設中) | 【比較用】イオンモール東久留米 |
|---|---|---|
| 所在地 | 宮城県仙台市 | 東京都東久留米市 |
| 運営会社 | イオンリテール株式会社 | イオンリテール株式会社 |
| 敷地面積 | 33,000㎡ | 54,000㎡ |
| 延床面積 | 75,000㎡ | 79,000㎡ |
| 賃貸面積 | 29,000㎡ | 31,000㎡ |
| 店舗階数 | 4階 | 4階 |
| 専門店数 | 約140 | 約130 |
| 開業日 | 2025年予定 | 2013年4月 |
| 駐車台数 | 約1,300台 | 約1,700台(無料) |
| 駐輪台数 | 約800台(910台とも) | 不明 |
| 最寄駅 | 北四番丁駅(約750m) | 東久留米駅(約2.1km) |
| 1日平均乗降客数 | 約7,763人(北四番丁駅) | 約56,000人(東久留米駅) |
| 最寄高速道路 | 仙台南部道路 長町IC(約8km) | 中央道 調布IC(約11km) |
| 出入口数 | 3か所 | 3か所 |
| 駐車場 | 立体駐車場+屋上 | 立体駐車場+屋上 |
| GoogleMap | 地図 | 地図 |
※規模としては東久留米とほぼ同等ですが、仙台上杉は都市中心部に近く、公共交通利用者を多く見込んでいる点が特徴です。
両者を比較すると、仙台上杉は東久留米よりもコンパクトながら、賃貸面積(売場面積)はほぼ同等の規模。つまり、効率的に設計された都市型ショッピングモールと言えるでしょう。
立地の特徴
都市の中心部という絶好の立地
イオンモール仙台上杉は仙台市役所から約800m、まさに仙台の中心部に位置します。この立地は、購買力の高い層が集まるエリアとして、小売業にとっては理想的な場所です。
複合開発の全貌
東北大学雨宮キャンパス跡地の再開発は、単なるショッピングモール建設ではありません。
開発構成
この複合開発により、住居・医療・商業が一体となった新しい街区が誕生します。
道路アクセスと交通予測
周辺道路網
東側:仙台市1153号線(愛宕上杉通 あたごかみすぎどおり) - 片側2車線(右折レーン付き) - イオンモールのメイン出入口
南側:仙台市746号線
- 片側2車線(右折レーン付き)
- 市のインフラ投資により整備済み
西側:病院・イオンモール間アクセス道路
- 片側1車線
- 主に病院アクセスと搬入用
北側:マンションとイオンモールの緩和道路
- 片側1車線
- 主にイオン立体駐車場アクセス道路
駐車場配置と交通動線
駐車場構成
- 北側立体駐車場:6階建て + 屋上(約1,380台、1フロアおよそ200台)
- 南側屋上駐車場:約330台
- 合計:1,710台(有料制)
出入口
- 西側:1箇所(中央分離帯により右折入出庫不可)
- 北側:1箇所(両方向対応)
- 西側:1箇所(入口専用)
交通量予測と時間帯分析
環境影響評価に基づく予測では、1日あたり6,321台の来場を想定しています。
ピーク時間帯 - 入庫ピーク:14時(1日の12%、約800台/時間) - 出庫ピーク:16時(1日の12%、約800台/時間)
この数字は、一般的なショッピングモールの利用パターンと一致しており、妥当な予測と考えられます。
病院との相乗効果と課題
駐車場利用の時間差による効率化
イオンモール仙台上杉の大きな特徴は、隣接する仙台厚生病院との関係です。
利用時間帯の違い
- 病院:平日午前中がピーク
- イオンモール:休日午後がピーク
この時間差により、駐車場の効率的な運用が期待できます。病院の駐車台数380台と合わせ、エリア全体で約1,700台の駐車スペースを確保できる計算になります。
交通動線の課題
一方で、病院とイオンモールが同じイオンモール西側のアクセス道路にめがけて車が集まることによる交通集中が懸念されます。特に救急車両のアクセスに支障をきたさないよう、適切な交通管理が必要でしょう。
公共交通アクセス
地下鉄利用の利便性
北四番丁駅から750mという距離は、徒歩約10分。都市型ショッピングモールとしては十分にアクセス可能な範囲です。
バス交通の現状
既存の宮城交通「上杉六丁目」バス停がイオンモール東側に位置していますが、運行本数は1時間最大3本、平日最終便は19:31と、やや物足りない状況です。
自転車利用への配慮
条例上の設置義務はないものの、910台という大規模な駐輪場を整備。これは近隣住民の日常利用を強く意識した設計と言えます。
住民の懸念と対応策
交通安全への不安
西側の仙台市1153号線では、朝夕の交通渋滞と、近隣の視覚支援学校への安全性が懸念されています。
イオンモール側の対応
- 警備員の配置
- 適切な案内看板設置
- 交通渋滞緩和への協力
環境への影響
大学当時の豊かな自然環境(多くの樹木)から、都市型開発になるため自然の減少への懸念も聞かれます。対策として、大学時代の樹木を可能な限り移植・活用する計画も進められており、他のイオンモールと比較して緑の多い施設になる予定です。
まちづくりの観点から見た意義
行政主導の計画的開発
この開発は「東北大学雨宮キャンパス跡地に関するまちづくり検討委員会」により、イオンモールありきではなく、都市整備として計画されました。
当初計画
- 北側:住居機能
- 南側:文化・商業・業務機能
しかし、病院移転の提案により計画が大幅に変更。結果として住居機能は縮小され、文化・業務機能はほぼ削減される形となりました。大病院が来るだけで再開発の意義を感じます。 個人的には大病院の横にイオンモールがあると、通院時やお見舞い時の買い足しをイオン価格でできるのは魅力的です。
インフラ投資の効果
仙台市は南側の746号線整備にインフラ投資を実施。これにより、開発エリア全体のアクセス向上が図られています。 (救急車のルートがこの道路になるため、道路中央がゼブラゾーンを活用し、緊急搬送を意識していると推測できます。)
近隣住民への配慮
イオン騒音対策の工夫
マンションが隣接する北側への配慮として、以下の対策が施されています。
- 立体駐車場スロープを中心から南側に配置
電気設備を北側以外に設置
ただし、立体駐車場北側に防音壁は未設置です。開業後の騒音レベルを注視し、必要に応じて追加対策を検討する必要があるかもしれません。立体駐車場横のマンションは意外に車のライトが眩しいので対策の有無が気になります。
交通渋滞予測と緩和策
渋滞の広がりは限定的か
仙台市役所近くの大通りが複数通る立地であることを考慮すると、適切な駐車場管理により、交通渋滞が広範囲に拡散する可能性は低いと予測されます。
開業後の展望
地域経済への波及効果
既に病院開業だけでかなりの効果があると思います。 これにイオンが隣接し、さらなる向上効果を期待できます。 特に高齢化社会において、医療機関と商業施設が隣接し、しかも市役所から徒歩圏内というメリットは大きいでしょう。
まとめ
イオンモール仙台上杉は、 さすがイオンモールという形でよく考えられた設計で地元への配慮もかなりしています。 北側から駐車場へアクセスは少し課題が残りますが、それでも周辺道路が広いのでかなり融通が利く立地です。
2025年10月8日の開業後、これらの予測がどの程度的中するか、そして地域にどのような変化をもたらすかを注視していく必要があります。
大学跡地という歴史ある土地に、新しい街の核となる施設が誕生する。それは仙台の新たな100年の始まりかもしれません。
参考文献
東北大学雨宮キャンパス跡地に関するまちづくり検討委員会【報告書】 平成18年12月 仙台商工会議所
環境影響評価書 ー雨宮キャンパスの跡地ー 平成30年1月 イオンモール株式会社
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