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選抜100年を迎えた今大会から使用が義務づけられた「低反発バット」の影響が、走攻守に表れた。4強が決まった段階で、うち2チームが防御率0点台という事実に象徴されるように「投高打低」が顕著な大会だった。
外野の守備位置が浅く、単打での二塁走者の生還が少なくなった。5得点以上のビッグイニングや2桁得点は1試合だけだった。決勝までの総得点数は200点。昨年は記念大会で36校が出場しており、今年と同じ32校だった2年前(263得点)と比較すると約25%減少した。本塁打は2年前の18本から3本(ランニング本塁打1を含む)と激減。金属バットが登場した1975年以降、最少だった5本を下回った。
バットの基準変更は投手のけが防止のほか、投手の球数が増えることを防ぐ狙いもある。健大高崎の佐藤は「コースに決めず、アバウトに攻めても打ち取れる」、報徳学園の今朝丸も「(バットの直径が)細くなった分、空振りが取りやすい」と話しており、防止効果とともに「投高打低」への流れを作ったと言える。
スイートスポットが狭くなったバットは、確実にミートしないと飛ばなくなった。八戸学院光星(青森)の仲井監督は「大振りしないことが大事」と語る。長打や連打が期待できなくなり、三塁に走者を進める重要性が増した。健大高崎はバットに当たった瞬間に三塁走者がスタートを切り、内野ゴロで得点を奪う「ゴロゴー」を再三、見せた。
1点を争う試合では、堅実な守備も勝ち上がるには欠かせない条件になる。決勝戦で戦った両チームの失策数は、5試合で報徳学園2、健大高崎5と、堅く球際に強い好守が印象深い。
2校が出場した石川県からは、日本航空石川が初戦で敗れたものの0―1と最後まで相手を苦しめ、星稜は県勢初の4強入りを果たすなど、能登半島地震の被災地に明るいニュースをもたらした。星稜の山下監督は快進撃に「たくさんの方の支援と、見えない力に背中を押された」と感謝した。球児と被災地が、互いにエールを送る。スポーツのもたらす力がそこにある。(豊嶋茉莉)