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もうコロナは言い訳にできない!「帰省は父と子」が歓迎されるワケ

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夏の帰省シーズンを迎えました。今年は、新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが5類に移行され、行動制限のない夏になりましたが、「コロナを理由に、夫の実家への帰省を避けるのが難しくなった」と、頭を抱える妻もいるようです。最近では、妻が同行せずに夫と子どもだけで夫の実家に帰省する「父子帰省」を検討する夫婦も増えています。

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せっかく帰省が中止になっていたのに…

写真はイメージです
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読売新聞の掲示板サイト「発言小町」に、「所詮嫁。(愚痴)」というタイトルの投稿が寄せられました。トピ主の「ヨメ」さんは、今年のゴールデンウィーク(GW)に、新幹線で4時間かかる夫の実家に、夫と幼い子どもと一緒に帰省しました。

総勢30人以上の親戚が集まり、よその子どもたちの世話もし、集合写真のカメラマン役を買って出るなど、懸命に気を使って過ごしました。にもかかわらず、親戚一同のグループLINEに招待されなかったことで、トピ主さんの心はすっかり折れてしまいました。

「私抜きの写真が私抜きのグループLINEに載っています。義母が息子に『夏休みも必ず遊びにおいでよ?』と言っていましたが、もう父子帰省でもいいですかね」と、トピ主さんは発言小町に同意を求めました。

さらに、「せっかくコロナで帰省中止になっていたのに、また帰省の 憂鬱(ゆううつ) に悩まされる日々が続くなんて、考えるだけでゾッとします。夫には申し訳ないけれど、帰省なんてなくなってほしい」と切実な思いをつづりました。この投稿には約400ものエールマークが付いています。

「私も同じようなことで、ある時期から一切行かなくなりました! まーすっきりしたこと!! 昔はスマホもなかったので、とにかく一人身の置き所もなく、わからない話で盛り上がり、なかなか寝ることもできませんでした。それから10年以上、夫と子どもだけ、今はほぼ夫だけで行っています。平和です(笑)」(「匿名」さん)とトピ主さんに賛同するコメントのほか、「いずれはトピ主様もしゅうとめになるはずです。想像してみてください。子どもは親の後ろ姿を見て育ちます。自分の母親は義実家に行ってなかったから、自分の嫁もそれでよし、となりますよ」(「のん」さん)といった批判的なコメントも寄せられました。

父子帰省に関しては、他の投稿でも触れられています。「嫁は夫の実家に一緒に行くのが当然ですか?」と題する投稿を寄せたのは、「さくら」さん。子どもが生まれてコロナ禍になり、遠方の夫の実家には夫だけが帰省していました。

夫が「(今年は)GWに実家に子どもを連れて帰りたい」と言うので、さくらさんは、夫と子どもを飛行場まで送り届けたら、一人で自分の実家に帰ろうと思っていました。ところが、実家の両親に「義実家には夫婦そろって行くのが当然」と言われ、義実家にも「さくらさんは来ないの?」と突っ込まれてしまいました。

「夫より稼ぎは少ないですが、私も働いており扶養に入っていません。育児の負担は圧倒的に私が多く、毎日精いっぱいです。そんな中の貴重な長期休みを、私の限られた時間を使って、大金を使うのであれば、大切に使いたい。お互い気を使わなくて良いのに、なぜ親世代(60歳代、70歳代)は、嫁は義実家に一緒に行くものと考えるのでしょうか」と思いをぶつけました。

このトピには、93件のレスが寄せられました。「おによめ」さんは、「私も義理の実家に行くくらいなら、自分の実家が良いなーと思います」と本音を明かしつつ、「何かのご縁で知り合った関係なので、もし嫌なことをされていないなら、年に1回くらいは顔を見せてあげたら良いのに。子どもが大きくなると行かなくなりますし、小学校低学年までの我慢とも言えます」とアドバイスします。

「いい人間関係を築くため」という題で意見を寄せたのは、「はむ」さん。「自分の価値観を押しつけるのは、お互いに良くない」という考えから、「家族そろって顔を合わせることを義両親が望むのなら、喜ばせてあげるために行くことも大事なのでは」と諭しました。

嫌な経験がなくても、義理の実家には帰省したくない

写真はイメージです
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多くのレスが、「父子帰省ではなく、妻であるトピ主さんも夫の実家に顔を出した方が良い」とアドバイスをしていました。ただ、夫の実家に帰省するのは「気が進まない」と感じている妻は少なくないようです。

スマートフォンアプリ 「エクスペリエンシェア」 を提供する「greeden」(本社・大阪市)が今年5月、義理の実家に帰省する予定の妻1001人を対象にインターネットでアンケート調査をしたところ、65.4%の人が帰省することを憂鬱に感じていると答えました。その理由(複数回答可)として、「気を使うことがストレス」(80.1%)と回答した人が最も多く、「休みなのに休めない」(40.7%)、「義理の家族とうまくコミュニケーションが取れない」(29.1%)と続きました。

「特に嫌な経験がなくても義理の実家に帰省することは憂鬱ですか?」との質問には、60.1%の人が「はい」と回答しました。義理の実家への帰省そのものが、妻にとっては憂鬱な行事になっていることがうかがえます。

父子帰省の注意点は?

立命館大の筒井淳也教授(家族社会学)に、妻たちが憂鬱になる背景について聞きました。

「日本では結婚すると女性が『夫の家に入る』という家父長制時代の感覚が残っていて、離れて暮らす親の方も『帰省するなら夫婦一緒で』を当たり前に思ってしまいがちです。でも、若い世代のほうは、共働き家庭が増え、対等な関係を築こうとしています。休日を過ごすなら『それぞれに自分の親を大事にすればいい』と考えても不思議はありません。妻として、それを言い出せないときにフラストレーションが溜まってしまうのかもしれませんね」と指摘します。

筒井教授は、妻を同伴しない夫と子どもだけの父子帰省には、親世代にとっても子世代にとってもメリットは大きいと考えています。「息子の配偶者は家族というよりも、『お客様』。息子と孫だけ帰省した方が、夫の実家側も気を使わずにすむでしょう。親世代の平均寿命が延びていて、その分、帰省する年数も昔と比べると長くなっています。家族全員で帰省するよりも交通費も少なくてすみますし、できるだけ負担を少なくして帰省を続けていくのに、父子帰省は有効な手段です」と言います。

「夫が子供を連れて帰省してくれたら、妻はその期間、自分の実家で過ごすこともできますし、普段できない自由な時間を持てることもあります」と強調します。

夫婦それぞれが自分の親に対応する「個別化」の流れは、今後さらに進んでいくのではないかと筒井教授はみています。今、帰省のあり方は過渡期と考えられるそうです。

筒井教授は「父子帰省すれば、父親が子どもとじっくり向き合う時間をつくることができます」と強調します。ただし、子どもの年齢や発達段階にもよるでしょうし、日ごろから父親が子どもの面倒を見ていなければ、父子帰省そのものが難しいという家庭もあるかもしれません。また、実際に父子帰省する場合でも親戚づきあいは続くので、「何かあった時に義理の実家と連絡を取り合えるような関係は築いておいたほうがよいでしょう」と注意も促しています。

筒井教授は「父子帰省と家族全員での帰省を織り交ぜるなど、家族ごとに適した帰省のスタイルを見つけられるといいですね」と話します。どんな帰省のスタイルを選ぶか、夫婦でしっかり話し合っておくことが大切なのかもしれませんね。

(読売新聞メディア局 バッティー・アイシャ)

プロフィル
筒井淳也(つつい・じゅんや)
立命館大学教授。1970年福岡県生まれ。一橋大学社会学部卒業、同大学大学院社会学研究科博士後期課程満期退学。主な研究分野は家族社会学、ワーク・ライフ・バランス、計量社会学など。著書に「仕事と家族 日本はなぜ働きづらく、産みにくいのか」(中公新書)、「結婚と家族のこれから 共働き社会の限界」(光文社新書)などがある。

【紹介したトピ】
所詮嫁。(愚痴)
嫁は夫の実家に一緒に行くのが当然ですか?  

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4424662 0 大手小町 2023/08/11 18:00:00 2023/11/13 10:56:18 /media/2023/08/20230803-OYT8I50071-T.jpg?type=thumbnail

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