結婚式で一緒に歩いてもらいたかった「世界一の父」、深い喪失感と被告への憤り…首都高6人死傷4日判決
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昨年5月の首都高6人死傷事故で起訴された元運転手に対する判決が4日、東京地裁で言い渡される。事故で父親の杉平
家族思い
「お父さんみたいな人と結婚したい」。昨年5月、東京都荒川区にある自宅のリビングで、夕食後に当時中学3年だった長女・
事故が起きたのは、その数日後の朝だった。車で仕事先に向かう途中に渋滞で停車していたところ、暴走する大型トラックの事故に巻き込まれ、裕紀さんは命を落とした。遺体の損傷が激しく、身元確認に時間がかかったため、葬儀まで半月の時間を要した。対面した裕紀さんは全身が包帯に覆われ、顔も見えなかったが、笑和さんは「ありがとう」と声を絞り出した。
朝は2人の子どもの弁当を準備し、仕事が終わるとすぐに帰宅して家族との食事や会話を楽しむ――。「子育ての時間は限られているから」と語っていた裕紀さんは、そんな家族思いの父親だった。
事故後、眠れない夜に笑和さんはベッドの上から寝室を何度も見渡した。生前、子どもたちと同じ部屋で寝ていた裕紀さんの姿はない。「なんでいないんだろう」。実感がわかなかった。
今年5月に始まった
「いつか結婚式で一緒に歩いてもらいたかった」。笑和さんは悔しさを抱えつつ、以前と同じように明るく生活し、裕紀さんを安心させたいと思っている。
「見合う処罰を」
事故当時、高校3年だった長男・
不安定な精神状態を立て直したのは、被告の裁判だった。「お父さんの代わりに闘っている」と気持ちを奮い立たせた。9月の意見陳述では「ずっと父のようになりたいと思っていました」と述べ、「家族を守り、支えていかなければならない」とも語った。
そして、発熱で意識がもうろうとした状態で運転して事故を起こした被告を前に訴えた。「事故は単なるうっかりではなく、プロドライバーとしての責任放棄によるものだ。処罰はそれに見合うものであってほしい」
2人は判決を法廷で見届ける予定だ。
体調不良 自覚し運転か
事故は昨年5月14日朝、埼玉県戸田市の首都高速5号池袋線下りで発生した。降籏紗京被告の大型トラックは渋滞で停車中の車列に突っ込んだ。炎上した3台にそれぞれ乗っていた3人が死亡し、ほかの車の3人が重軽傷を負った。
降籏被告は、自動車運転死傷行為処罰法違反(過失運転致死傷)などに問われ、初公判で起訴事実を認めた。検察側は公判で、事故3日前から風邪の症状があった降籏被告が、眠気成分を含む風邪薬を繰り返し服用した上、事故前夜から当日未明にかけ、不倫相手とLINEのやり取りを続け、睡眠をほとんど取っていなかったと指摘。事故当日は38度を超える高熱で体調不良を自覚しながら運転したとした。
検察側は、追起訴された児童買春・児童ポルノ禁止法違反(所持)と合わせ、法定刑の上限となる懲役8年を求刑。弁護側は寛大な判決を求めている。