手塚治虫は「眼で原稿を喰らうように描いていた」ランニングシャツにねじり鉢巻き・汗だくで描かれたブラック・ジャック…実録マンガの作者がトークショー
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漫画家・手塚治虫氏(1928~89年)が描いた医療漫画の名作「ブラック・ジャック」の展覧会「手塚治虫 ブラック・ジャック展」が、大阪市阿倍野区のあべのハルカス美術館で開かれている。18日には、手塚治虫氏の漫画制作の実像に迫った実録漫画「ブラック・ジャック創作秘話~手塚治虫の仕事場から~」の原作者・宮崎克さんと、作画した漫画家・吉本浩二さんとの対談イベントがあった。(大阪デジタル編集部 川崎陽子)
シン・手塚像
「ブラック・ジャック創作秘話」は、手塚治虫生誕80周年と週刊少年チャンピオン創刊40周年を記念して企画された。2009年に読み切り作品として週刊少年チャンピオンなどに掲載された後、連載化し、5巻で完結した。手塚治虫氏の元編集者や遺族ら約30人に取材し、「漫画の神様」と称された手塚像を壊すエピソードが描かれている。
第1話「壁の穴」では、頭にはねじり鉢巻き、ランニング姿で、「目で原稿を喰らうように描いていた」という異色の手塚治虫氏が登場する。対談イベントでは、吉本さんは「手塚先生は『漫画を必死で描いていた』という編集者の証言で、軽々、スイスイと漫画を描くイメージが変わった。手塚先生も、我々のような末端の漫画家たちと同じ姿であってほしい、むしろ自分たちの代表でいてほしいという思いから、ああいう絵になった」と振り返った。
苦心した跡まで美しい生原稿
ブラック・ジャック展の会場には、500点以上の手描き原稿が並ぶ。展示を見た宮崎さんは「(修正液を使う)ホワイトや、(新しい紙を)切り貼りした跡が多い。大量の連載に追われ時間がない中、少しでも良い作品にしようと修正を重ねたこだわりが原稿から見える」と語った。
ブラック・ジャックの中で吉本さんのお気に入りは、原稿締め切りを巡る編集者と手塚氏のせめぎ合いの裏で生まれた「虚像(232話)」。吉本さんは「好きな回の原稿が全部見られる。大阪にいたら、展覧会に毎日通う」と話し、「墨汁のように黒々とした線には迷いがない。ブラック・ジャックのキャラクターがエネルギーに満ち、伸びやかなのは、名人の線による所だと改めて感じた。上質な紙に美しい白黒のコントラストで描かれ、まるで工芸品のよう」と感動していた。
広く深く長く読み継がれる
吉本さんが手塚作品の魅力について、こう語った。
「手塚先生は、マンガは読みやすくわかりやすく、ということを常に考えられていたんじゃないか。だから絵も、哲学的で難しい話でも、子供からお年寄りまで、とても見やすくて読みやすい。この相反することを同時に表現されるので、ブラック・ジャックなどの作品は、広く深く長く、読まれ続けているのだと思います」。
詳報は こちら
「手塚治虫 ブラック・ジャック展」は、あべのハルカス美術館(問い合わせ先は06・4399・9050)で12月14日まで。一般2000円、高校・大学生1600円、小中学生500円。
公式サイトは こちら 。