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開幕まで1年を切った2025年大阪・関西万博は、各国の豪華なパビリオンが並ぶ夢の舞台だ。でも、もっと身近な場所で、テーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」の実現を目指す人たちがいる。彼らを応援し、世界に発信するのが日本国際博覧会協会(万博協会)の「 共創チャレンジ 」だ。みんなで共に創る万博と、その先の未来。万博のもうひとつの“主役”たちの挑戦を紹介する。
天王寺動物園・ZOOでつながるプロジェクト~うんちで緑を増やそう~
およそ180種1000匹の動物を飼育する天王寺動物園(大阪市天王寺区)。日々、動物たちが出すふんを
ふんは臭いが強く、水分を含むため、ごみとして処理するには手間と費用がかさむ。園は2002年、ごみの減量化のため、大型コンポストタンクを導入した。
処理するのはサイやキリン、羊など草食動物のふんや食べ残しだ。約19立方メートルのタンクの中でプロペラがゆっくりと回転してかき混ぜる。バクテリアの働きにより、3~7日ほどで茶色の堆肥に変わる。臭いやべたつきはなく、植物の生育に欠かせない窒素やリン、カリウム類を豊富に含む。
21年10月、大阪・関西万博の共創チャレンジに登録。植樹団体と園内で堆肥を使った植樹会を行ったり、植物園「咲くやこの花館」(同市鶴見区)で土作りイベントを開いたりしている。
昨年度は、小学生らが園内で堆肥を使って野菜や牧草を育て、動物たちの餌にする「てんのうじZOOガーデン」を府と共に開いた。約20平方メートルの畑に子どもたちがホウレンソウと小松菜、牧草を植え、2か月後に収穫すると、チンパンジーやテンジクネズミに与えた。
学芸員の中原祥貴さん(38)は「子どもたちにふんを通じて生態系の循環を伝えることができた。環境について考えるきっかけになったのでは」と手応えを語る。
パートナー増やし活動加速を
課題は園外で堆肥を使ってもらえる先を探すことだ。広く市民に配りたいが、除草剤の成分が堆肥に残る可能性がある。人体に影響はないが、事前に説明する必要もあり、今は配布先を自治体や団体に限っている。年間にできる22トンの堆肥のうち、園内外で活用できているのは1割ほど。残りはごみとして費用を払って処分しているのが現状だ。
解決のきっかけにと、園は共創チャレンジに期待を寄せる。3月、阪南市が園の取り組みを応援する「共創パートナー」になった。市は今後、市内の茶畑などで堆肥を利用できるか検討している。
「共創チャレンジを通じて多くのパートナーと出会い、活動を広げていきたい」と中原さん。園の試みが万博で加速することに期待を寄せている。(福永健人)
◆共創チャレンジ =SDGs(持続可能な開発目標)の達成を目指し、企業や大学、自治体などが身近な課題解決に挑む取り組み。一部は万博期間中に会場内で成果を発表できる。「参加型万博」を体現する活動で、3月末時点で1693件が登録されている。