自民党安倍派(清和政策研究会)の政治資金パーティー券を巡る裏金疑惑を受け、同派に所属する宮下一郎農林水産相が14日、辞表を提出した。在任期間はわずか93日。とはいえ、これまでも不祥事などを理由にスピード辞任に追い込まれた農水相は珍しくない。短命大臣が相次ぎ〝鬼門〟とも称される要因として、関係者は業界の体質を指摘する。
3分の1が不祥事で辞任
農水相は平成12年から今年までの24年間に、重任や臨時代理を除き30人が務めている。このうち、今回の宮下氏のように不祥事がらみで辞任したのは3分の1近いに9人に上る。一方で、1年以上職責を全うできたのはわずか7人。歴代最短だったのは、自身が関係する農業共済組合から補助金を不正受給したとして辞任した遠藤武彦氏で、在任期間はわずか8日間だった。
9人の辞任理由をみると、ほぼ全てが不正な金銭のやり取りの責任をとったものだ。直近では、鶏卵生産大手「アキタフーズ」グループ元代表から現金500万円の賄賂を受け取った収賄罪で、令和4年6月に執行猶予付きの有罪判決をが確定した吉川貴盛氏の辞任劇が記憶に新しい。
古い体制維持
なぜ、農水相に金にまつわる不祥事が多いのか。ある自民党議員の政策秘書は「自らに有利な計らいを求める業者や団体の数が、他の省庁に比べてはるかに多い。そうした業者や団体は古い体質や体制が維持されたままで、献金を持ち掛ける慣習が続いている」と打ち明ける。特に、自民党農林部会の幹部などの要職に就く農水族議員に対しては、そうした話が舞い込んでくるようだ。
第2次安倍晋三政権では農業の競争力強化に向けて農協改革や自由貿易の拡大を進めたこともあり、農水相や党農林部会長に農水族の起用を控えてきた節がある。その際に農水相に就任したある議員の私設秘書は、「就任した瞬間に色々な農業団体から献金の話がかなり舞い込んできて驚いた。おそらく、農水族議員の方々は、こうした献金の話をかなり受け入れてきたのだろう」と声を潜めた。