首相官邸
政府は23日に初めて開いた関係閣僚会議について、活動記録は残すものの、議事録や議事概要の作成を義務付けない方針だ。対策の「司令塔」と位置付けられた会合の検証が困難となる可能性があり、識者から疑問の声が上がっている。
政府は昨年3月、コロナ関連の会議の記録は「将来の教訓に極めて重要」として、行政文書の管理に関するガイドライン(指針)に基づく「歴史的緊急事態」に初めて指定した。
歴史的緊急事態は、2011年の東日本大震災を巡る会合の議事録が未作成だった反省から、12年に規定された。関連会合を「政策の決定、了解を行う会議」と「行わない会議」に分類。前者に議事録や議事概要の作成を義務付ける一方、後者は共有された確認事項などの記録作成を求めるにとどまる。どの会議が歴史的緊急事態の対象に当たるか、「行う」「行わない」に該当するかは各省庁が判断し、内閣府に報告する。
内閣府によると、各省庁から報告された歴史的緊急事態の対象会合は19件。うち「行う」は4件で、政府の方針を最終決定する「新型コロナ感染症対策本部」や、「基本的対処方針分科会」などがある。「行わない」の15件には、安倍晋三前政権で閣僚や省庁幹部が出席し、政府方針を実質的に決めていた「連絡会議」などが該当している。
菅義偉政権ではこれまで、首相と関係4閣僚で構成する「5大臣会合」が緊急事態宣言の発出・解除といった政府方針を決定してきた。政府は同会合を「単なる打ち合わせで、歴史的緊急事態の対象となる会議に当たらない」として記録を作成しておらず、野党などが批判していた。
政府高官らによると、この日の会合は首相の呼び掛けで開催。政府はこの会合を「行わない」に分類する方針だ。設置の狙いには「記録自体は残すので、批判をかわせる」との思惑もあるというが、発言者や発言内容の記録はしなくても問題ないことになる。
震災関連の議事録未整備を巡っては、当時、野党だった自民党が激しく追及した経緯がある。有識者でつくる「公文書管理委員会」の委員として、歴史的緊急事態の記録の制度化に関わった三宅弘弁護士(東京)は「情報隠しだ。震災時に旧民主党政権を批判した当事者が制度を『骨抜き』にしている」と政府を批判。「重要閣僚による会合は事実上、閣議並みの了解事項があるはず。議事録は当然必要だ」と指摘した。 (湯之前八州、久知邦)