大気ゆらぎ、フェージング
気温の変化や大気の屈折率の変動、風が引き起こす対流や乱流などの影響で光の波面が歪む自然現象。地上-衛星間光通信では、大気ゆらぎの影響によって信号光の受信光パワーが変動してしまい、通信品質の劣化及び信号断が生じる(この現象はフェージングと言われている)。風のランダムな変化により大気中の屈折率が絶えず変化しているため、大気ゆらぎの予測がしづらい。
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誤り訂正符号
通信を行う際に、通信路や通信機器の影響で通信データに誤りが生じる場合がある。その誤りデータを訂正するため、通信データとは別に付加する符号データのことである。通信分野では受信したデータの誤りを検出した後に訂正する前方誤り訂正を用いるのが一般的である。なお、誤り訂正符号の条件として、符号化率(※)がある。本実験では、符号化率を調整することで、誤り訂正能力を高めた。
(※)符号化率=(通信データの情報量)/(通信データと誤り訂正符号データの総情報量)
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5G NR LDPC
第5世代移動通信システム(5G New Radio: 5G NR)では、高速・高信頼な通信を実現するために、誤り訂正符号としてLDPC(Low-Density Parity-Check)符号が採用されている。LDPC符号はシャノン限界と呼ばれる理論的な能力上限に迫る誤り訂正能力を持つ。さらにLDPCの復号のアルゴリズムは並列処理に適しているため、低遅延・高スループットが求められる5Gの物理層の要求に適合している。
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DVB-S2
DVB-S2(Digital Video Broadcasting Satellite 2nd Generation)は衛星放送向けに策定された第2世代のディジタル伝送規格であり、通信効率と誤り訂正能力の向上を目的とし、連接符号と呼ばれる強力な誤り訂正方式が採用されている。さらに衛星放送の無線電波伝搬路の状態に応じて変調方式と符号の強さを適応的に変化させることが可能である。これにより、第1世代のDVB-Sと比較して最大約50%の周波数利用効率の向上が実現されている。
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NICTの本部、鹿島宇宙技術センター、沖縄電磁波技術センターの3拠点に設置している口径1m以上の反射型望遠鏡を備えた光地上局。低軌道衛星やHAPS等の移動体の追尾が可能。本実験では、NICT沖縄電磁波技術センターに設置している1m光地上局を活用し、静止衛星である光衛星間通信システム(LUCAS)との間の地上-衛星間光通信実験を実施した。
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光衛星間通信システム(LUCAS: Laser Utilizing Communication System)
光衛星間通信システム(LUCAS)は、静止軌道上(高度36,000 km)に衛星を配置し、比較的地球近傍を周回する地球観測衛星(高度200〜1,000 km)と地上局との通信を中継する通信システム。これにより、地球観測衛星と地上局との間のリアルタイムでの通信可能領域を飛躍的に拡大することができる。また、これまで電波を用いていた衛星間中継回線を光にすることで大幅な通信大容量化を図り、地球観測衛星の高度化、高分解能化に対応する。
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インタリーバ
インタリーバは、送信側で送信データの順序を決められた規則に従って並び替えを行うディジタル処理部のことである。これにより、バーストエラー(連続して発生する誤りデータ)をランダムエラー(ランダムで発生する誤りデータ)に近い形で分散できるようになるため、誤り訂正符号の訂正能力を向上させることができる。この処理を地上-衛星間光通信に適用すれば、大気ゆらぎで生じたバーストエラーをランダムに分散できるようになるので、大気ゆらぎの低減効果が大きく期待される。なお、インタリーバの条件として深さがあり、深さを長くすることでフェージングの訂正期間を長くできる。本実験では、大気ゆらぎが引き起こすフェージングの期間をあらかじめ想定し、インタリーバの深さを調整した。
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