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JRIレビュー Vol.4,No.115

財政硬直化の現状と弊害

2024年05月13日 蜂屋勝弘


わが国財政では、現在、歳出総額の過半が社会保障関係費と公債費で占められており、財政支出全体として財源の効率的な配分が阻害される「財政硬直化」の状況にあるとみられる。今後を展望しても、高齢化に伴って社会保障関係費が引き続き増加し、公債費については、金利上昇リスクの顕在化に伴って増加ペースが加速する恐れがあり、財政硬直化の深刻化が懸念される。

財政硬直化の弊害として、①生活基盤や経済成長への悪影響、②新たな政策課題のための財源確保の難航が指摘できる。生活基盤や経済成長への悪影響では、今後予想される社会資本ストックの老朽化や、政府の科学技術関係の予算額が景気等によって大きく変動することによる将来の国民生活や経済成長への悪影響が懸念される。

新たな政策課題のための財源確保では、懸案である「脱炭素化」、「防衛力強化」、「少子化対策」において、既存の歳出の見直しのみならず国民負担の引き上げも検討されたものの、結局、①国民負担引き上げの先送り、②当面の財源を新たな国債の発行で調達、③特定財源の拡大、④診療報酬の極めて小幅なマイナス改定、といった結果に終わっている。

財政硬直化のもと、裁量的経費の補正予算での追加が常態化・大型化している。当初予算策定時に予見できなかった大規模災害等への対応のための経費を補正予算で追加することは妥当であり、借金による財源調達もやむを得ない面はある。しかしながら、大規模災害に見舞われたわけでもなく金融危機に陥ったわけでもない“平時”においても安易に巨額の借金を行うことは、当然ながら債務残高を過剰に増やし財政健全化の遅れに繋がる。景気拡大期に、税収の上振れ分を債務償還に使わず、裁量的経費の追加に使うことは、補正予算としての妥当性が疑わしいだけでなく、財政健全化の面からも問題である。

補正予算がシーリングの抜け穴になることで、債務残高の圧縮が遅れるだけでなく、毎年の公債費の増加を通じて、ひいては財政硬直化の長期化や一段の深刻化を招きかねない。同様の構図は、最近の予備費の増加にも当てはまり、今後の動向が懸念される。

今後、財政硬直化の進行を少しでも遅らせると同時に、必要な財源を継続的に確保するには、①政府債務の追加を抑制すると同時に税収の上振れ分は政府債務の返済に使用、②必要な財源は当初予算で確保、③歳入の特定財源化を回避、④国民負担・税負担の在り方を見直す、といった取り組みが必要である。財政硬直化のもと、当初予算の配分を見直し、国民負担を引き上げるには、その必要性を国民に対し丁寧に説明し、既得権者を説得する必要がある。そうした困難かつ地道な活動こそが政治の本来の仕事であろう。

(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)
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