詐欺罪とは?成立要件や処分を軽くするための対処方法を解説
詐欺罪とは、人をだまして金品を受け取ったり、サービスなどの財産的利益を受けたりすることで成立する犯罪です。詐欺罪が成立すると、重い刑罰を科せられることになりますので注意が必要です。
本コラムでは、詐欺罪が成立するための要件や、詐欺罪に問われた場合に処分を軽くするための対処方法について解説します。
1. 詐欺罪とは
詐欺罪とは、人をだまして財物を交付させたり、財産上不法の利益を得たりすることで成立する犯罪です(刑法246条1項、2項)。
人をだまして財物を交付させた詐欺罪のことを、「1項詐欺」ともいいます。他人から金品をだまし取った場合が、1項詐欺に該当します。
人をだまして財産上不法の利益を得た詐欺罪のことは、「2項詐欺」ともいいます。無銭飲食や無賃乗車、その他、代金を支払うつもりがないのに、あるようにだましてサービスを利用する行為などが、2項詐欺に該当します。
詐欺罪が成立した場合に科せられる刑罰は、1項詐欺、2項詐欺とも10年以下の懲役です。罰金刑がないため重い罪とされており、起訴されると99.9%以上の確率で懲役の有罪判決が言い渡されます。
なお、詐欺罪は未遂でも処罰の対象となることに注意が必要です。欺罔(ぎもう)行為(欺く行為)の結果、財物や財産上不法の利益が得られなかった場合でも、詐欺未遂罪が成立する可能性があります(刑法250条、43条本文参照)。
2.詐欺罪が成立する要件
詐欺罪は、以下の4つの要件を満たす場合に成立します。
- 欺く行為を行ったこと
- だました結果、相手が錯誤に陥ったこと
- 錯誤に基づき、相手が財産を処分(交付)したこと
- 処分(交付)する行為により、財産(財産上の利益)が移転したこと
以下では、各要件について分かりやすく説明します。
(1)欺く行為
詐欺罪の実行行為は、「欺く行為」です。犯人の真意を知っていたら相手が財産を処分(交付)しないような状況で、財産を処分(交付)させるために相手を欺く行為が、ここでいう「欺く行為」に当たります。
ただし、商談などで契約を獲得するために多少の誇張を交えて話すことは、社会通念上許される駆け引きの範囲内であれば、「欺く行為」には当たりません。
「欺く行為」は積極的にうそをつく「行為」だけでなく、「不作為」(何もしないこと)や「挙動」によっても成立することがあります。たとえば、コンビニなどのレジで店員が釣り銭を多く渡そうとしていることに気づいたにもかかわらず、そのまま黙って釣り銭を受け取った場合は詐欺罪が成立します。
「欺く行為」をすれば詐欺罪の実行行為を完了したことになるため、以下の要件を満たさなくても詐欺未遂罪が成立することにも注意しましょう。
(2)相手が錯誤に陥ること
欺く行為をしても、相手が錯誤に陥らなければ詐欺罪は既遂になりません。「錯誤」とは、虚偽の内容を信じ込むことです。
たとえば、オレオレ詐欺の電話で息子と名乗る人物が「交通事故を起こしたので示談金が必要だ」とうそをつき、相手がその事実を信じた場合は錯誤に陥ったことになります。
一方、相手が犯人のうそを見破りながらも同情心から金品を交付した場合は、錯誤に陥ったことにはなりません。この場合、犯人には詐欺罪は成立しませんが、詐欺未遂罪に問われる可能性はあります。
(3)処分(交付)する行為
詐欺罪の成立要件として、相手方が錯誤に基づき財産を処分(交付)する行為も必要です。
人をだまして注意をそらせておき、そのすきに相手の所持品を持ち去った場合は、処分(交付)行為がないため詐欺罪ではなく、窃盗罪が成立します(刑法235条。10年以下の懲役または50万円以下の罰金)。
(4)財産(財産上の利益)の移転
欺く行為によって錯誤に陥った相手の処分(交付)行為により、財産(財産上の利益)が移転することで、詐欺罪は既遂となります。
たとえば、特殊詐欺の電話で、犯人が言ったことを信じ込んだ相手がお金を振り込もうとしたものの、家族等に止められて振り込まなかった場合は、財産が移転していないため、詐欺罪は未遂にとどまります。
(5)「だまされた人=被害者」でなくても成立
なお、「だまされ、それにより財産を処分する人」と、「被害者」とは必ずしも一致する必要はありません。
たとえば、クレジットカードの不正使用の場合、「欺く行為」の対象と財産(品物)を処分する者が「加盟店」であり、被害者が「クレジットカード会社」です。
このような詐欺を「三角詐欺」といいます。
「欺く行為」には、「他人名義のクレジットカードで買い物をすること」だけでなく、「自身の名義のクレジットカードで、支払能力も意思もないにもかかわらず買い物をすること」も含まれます。
3.詐欺罪に問われた場合の刑事手続きの流れ
詐欺罪が成立し、警察に発覚した場合は、基本的に以下の流れで刑事事件の手続きが進められます。
(1)警察からの呼び出し
多くの場合は、まず警察からの連絡で任意の事情聴取に呼び出されます。
呼び出しに応じなければ、逃亡や罪証隠滅のおそれがあると判断され、逮捕される可能性が高まりますので、必ず出頭しましょう。
出頭する日時・場所は警察によって指定されますが、日時については多少の調整には応じてもらえます。指定された日時に出頭できない場合には事情を伝えて、日程の変更を頼んでみるべきです。
(2)逮捕・勾留
任意の事情聴取の結果、身柄拘束の必要性があると判断された場合は、逮捕されることがあります。場合によっては任意出頭の呼び出しがなく、いきなり逮捕されることもあります。
逮捕されると警察署の留置場に身柄を拘束され、取り調べを受けなければなりません。引き続き、勾留されることも多いです。
逮捕の期間は3日(72時間)まで、勾留期間は10日までですが、捜査の必要性に応じて勾留期間は最大10日まで延長されることがあります。
逮捕される要件と勾留される要件は厳密には異なりますが、以下の要件を満たす場合に逮捕・勾留が可能とされています(逮捕の要件については刑事訴訟法199条1項、勾留の要件については刑事訴訟法60条1項)
-
罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があること
-
罪証隠滅のおそれがあること
-
逃亡のおそれがあること
実際には、被害金額が大きい場合や、犯行態様が悪質な場合、被疑者が犯行を否認している場合などで、逮捕・勾留されやすい傾向にあります。逮捕・勾留の可能性を少しでも軽減するためには、任意の事情聴取で誠実に事実を説明することが大切です。
逮捕・勾留されなかった場合でも、捜査は進められます。この場合は、警察官や検察官から呼び出しを受け、取り調べを受けることになります。呼び出しに応じなければ逮捕・勾留される可能性が高まりますので、呼び出しには必ず応じましょう。
(3)取り調べ
取り調べは、取調室において、取調官(警察官または検察官)から事情を尋ねられ、それに応える形で行われます。被疑者が取り調べで話したことは供述調書に記載され、刑事裁判で証拠となることがあります。
取り調べでは、事実をありのままに説明することが大切です。取調官が言い分を聞き入れてくれなかったり、取調官が想定したストーリーを押し付けてきたりすることもありますが、不本意な内容を供述調書に記載されないように注意しましょう。
供述調書にサインしてしまうと、その内容に納得がいかなくても、刑事裁判で供述内容を覆すことは困難となります。
取り調べでは、黙秘権を行使することもできます。逮捕・勾留された場合には、いつでも弁護士を呼ぶ権利が与えられます。対応に困ったときは安易に供述せず、弁護士を呼んで接見に来てもらい、取り調べへの対応方法についてアドバイスを受けましょう。
(4)起訴・不起訴の決定
逮捕・勾留された場合は、上述した勾留期間が満了するまでに、検察官が起訴・不起訴を決めます。
逮捕・勾留されなかった場合は、期間の制限はありませんが、多くの場合は数か月~半年程度の間に起訴・不起訴が決められます。
なお、勾留されたまま起訴された場合は、起訴後も引き続き勾留されることが多いです。しかし、起訴後の勾留では、保釈の申請が可能となります。
保釈とは、一定の要件のもとに、いったん身柄を解放してもらう制度のことです。ほとんどの場合は、裁判所が定めた金額の保釈保証金を納める必要があります。保釈保証金の額は50万円~300万円程度が相場で、その中でも200万円程度のケースが比較的多いです。逃亡や罪証隠滅などの問題行動をしなければ、最終的に保釈保証金は全額還付されます。
起訴後も勾留された場合には、保釈の申請を検討しましょう。
(5)刑事裁判
起訴されると、おおむね1か月半~2か月後に刑事裁判が開かれます。犯罪事実を自白している場合は1回の期日で結審し、その2週間程度後に判決が言い渡されることが多いです。
詐欺事件は必要的弁護事件とされているため、私選弁護人を選任していない場合は国選弁護人が選任されます。
刑事裁判では、まず検察官が犯罪事実を立証し、その後に弁護側が主張する事実を立証していきます。
詐欺罪には罰金刑がないため、初犯でも悪質な場合は懲役の実刑判決となる可能性が十分にあります。そのため、犯罪事実に争いがない場合には、執行猶予付き判決を求めることになります。
そのためには、被告人が深く反省していることや、被害者と示談が成立したこと、今後の被告人の生活を指導・監督する身元引受人がいることなど、プラスの情状を十分に立証することが大切です。
起訴されたら、事前に弁護士と十分に打ち合わせたうえで、刑事裁判に臨みましょう。
4.詐欺罪の処分を軽くするための対処方法
詐欺罪の処分を軽くするためには、以下の対処方法が有効です。起訴前なら不起訴処分となる可能性を高めることができますし、起訴された場合でも執行猶予付き判決となる可能性が高まります。
(1)示談交渉をする
被告人にとってプラスとなる情状の中でも最も重要となるのは、被害者との示談です。
示談が成立して示談金を支払えば、被害が回復されたことになるため、処罰の必要性が軽減されます。そのため、軽い処分が期待できるのです。
被害者の許しが得られた場合には、示談書に「重い処分は望みません」「軽い処分を望みます」などと記載してサインしてもらい、検察官や裁判所へ提出すれば、さらに高い効果が期待できます。
(2)示談が成立しなくても被害弁償を申し出る
被害者の意向によっては、示談に応じてもらえないこともあります。その場合でも、被害弁償を申し出ることが重要です。
被害弁償とは、被害者からだまし取った金品を返還することです。被害者の許しが得られなくても、被害弁償をすれば被害が回復されたことになるため、処分内容の軽減が期待できます。
被害弁償の受け取りを拒否された場合でも、その提供を申し出ることで、深く反省していることを示すことができますので、処分内容の軽減につながる可能性があります。
(3)弁護士に依頼する
示談交渉は、弁護士に依頼するのがおすすめです。
犯人と関わりたくないという理由で示談交渉を拒否する被害者も少なくありませんが、弁護士が間に入ることで交渉が可能となり、円満に示談が成立することも多いです。
特に、逮捕・勾留された場合は自分で示談交渉をすることが困難なので、早めに弁護士へ依頼して動いてもらった方がよいでしょう。
その他にも、早期に弁護士に依頼すれば、取り調べへの対応方法についてアドバイスが受けられますし、不起訴処分を求めて検察官と掛け合ってもらうことも可能です。
起訴された場合でも、保釈の申請から刑事裁判での主張・立証までを弁護士に任せることができます。
詐欺罪の成立要件を満たさないと考えられる場合には、無罪を主張・立証することになりますが、その場合も弁護士が全面的にサポートしてくれます。
詐欺罪に問われたら、すぐに弁護士へ相談してみることをおすすめします。
- こちらに掲載されている情報は、2025年07月08日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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