容疑者は「子どもを殺す考えにとらわれていた」と当局 米ミネアポリス学校銃撃事件

子ども連れの大人たちが集まっている。中央では眼鏡をかけた女性が、緑色のシャツを着た少年を抱きしめ、目を閉じている。その隣では、同じような緑色のシャツを着た10代少女がネックレスを握りしめながら泣いている

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画像説明, 事件があった地域の住民らには衝撃や悲しみが広がっている

米ミネソタ州ミネアポリスの教会で礼拝中の児童・生徒らが銃撃され死傷した事件で、捜査当局は28日、容疑者が「子どもたちを殺すという考えにとらわれていた」と説明した。

この事件では、市内の「アナンシエイション(受胎告知)教会」で27日午前、ロビン・ウェストマン容疑者(23)が建物の外側から、3種の銃を使って窓越しに数十発を発砲したとみられている。銃撃でフレッチャー・マーケルさん(8)とハーパー・モイスキーさん(10)の2人が殺害され、18人が負傷した。

ミネアポリス警察のブライアン・オハラ本部長は28日、特別な動機は見当たらないと述べた。そして、「私たち全員を憎んでいるようだった」、「何よりも、子どもたちを殺したがっていた」とした。

容疑者の経歴について、当局は今のところ詳細を発表していない。ただ、事件があった教会に併設されている学校にかつて通い、母親がそこで働いていたことは明らかにしている。母親は警察からの連絡に応じていないという。

ミネソタ州のジョセフ・トンプソン司法長官代理は28日の記者会見で、「銃撃者はユダヤ人コミュニティーや(ドナルド・)トランプ大統領など、多くのグループに対する憎しみを表明していた」と述べた。

当局によると、現場で自らを撃って死亡した容疑者は、書き置きをしていた。だが、明確な動機は不明だという。

トンプソン長官代理は、「加害者の言葉を繰り返すことで、それらに威厳を与えることはしない。おぞましく、卑劣な内容だ」と述べた。

連邦捜査局(FBI)のカシュ・パテル長官は、今回の事件を、「憎悪に満ちたイデオロギーに基づく国内テロ行為」だとしている。

パテル長官はXへの投稿で、容疑者が銃やメモに「複数の反カトリック、反宗教的な記述を残していた」と説明。「ユダヤ人に対する憎悪と暴力を表明し、『イスラエルは滅びろ』、『パレスチナを解放せよ』と書いていた。また、ホロコーストに関する露骨な言葉を使っていた」とした。

長官はまた、容疑者が「銃の弾倉に、トランプ大統領への暴力を露骨に呼びかける内容を書いていた」とした。

当局によると、事件で使われた銃はすべて合法的に購入されていた。容疑者はどの政府機関の監視リストにも載っておらず、精神疾患の診断や治療を受けていたことを示すものも警察は確認していないという。

5年前に名前を変更

容疑者は2020年に、名前をロバートからロビンに法的に変更していた。当時、裁判官は、「未成年の子どもが女性を自認している」と記していた。ただ、連邦当局や警察の一部は、事件について説明する際、容疑者を男性として扱っている。

警察のオハラ本部長は、「銃撃者の行動の目的は悪名を得ること」だとし、報道機関は容疑者の名前を使うのをやめるべきだと記者団に主張した。

また、容疑者は「この国や世界中で頻発している他の多くの銃乱射事件の犯人と同様、過去の銃乱射事件に狂気じみた憧れを抱いていた」と付け加えた。

米当局は何年か前から、凶悪犯罪で有名になろうとする人がいるため、銃乱射事件は模倣犯を生むと警告していた。

主要報道機関のいくつかは、多くの人を殺害した人物の身元を明かさない方針をとっている。

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被害児童の親が「行動」求める

殺害された児童の父親のジェシー・メルケルさんは、「昨日、臆病者が8歳の息子フレッチャーを私たちから奪うことを決めた」、「私たちは彼を抱くことも、彼と話すことも、一緒に遊ぶことも、彼があのまま素晴らしい青年に成長していくのを見ることも、全部できなくなった」と記者団に話した。

殺害されたもう1人の児童の両親のマイケル・モイスキーさんとジャッキー・フラヴィンさんは声明で、娘のハーパーさんについて、「明るく、陽気で、とても愛された10歳だった。その笑い声、優しさ、精神は、彼女を知るすべての人の心を動かした」とした。

また、ハーパーさんの妹は想像を絶する喪失に悲しんでいるとし、「家族として、私たちは打ちのめされている。痛みの深さは言葉で言い表せない」と述べた。

さらに、「彼女の思い出が」銃による暴力を止めるための「行動を促す」ことを願っていると述懐。「こんな痛みに耐えることを強いられる家族があってはならない。(中略)変化は可能であり、必要だ。ハーパーの物語を、多くの悲劇の一つにしてはならない」と訴えた。

事件当時に娘クローイーさん(11)が教会にいたという、フランス出身のヴィンセント・フランコールさんは、アメリカで子どもたちが銃乱射事件に備える訓練を受けているのは「異常だ」と述べた。

そして、学校での銃撃事件について、「ここではパターン化している。もはや突飛な出来事ではない」と指摘。「毎朝、子どもたちを送り出すとき、無事に帰ってくるかわからないと、妻に言っている」と話した。

今回の事件を受け、ミネアポリスのジェイコブ・フレイ市長を含む複数の政治家らは、州に対して攻撃用の武器を法律で禁止するよう求めている。