【検証】 アメリカ政治のアカウントの拠点がインドに……Xの位置情報機能で明らかになったこと

シャイアン・サルダリザデフ記者、トーマス・コープランド記者、トム・エッジントン記者(BBCヴェリファイ)
ソーシャルメディアのX(旧ツイッター)はこのほど、ユーザーの位置情報を表示する新しい透明性機能を導入した。その結果、高いエンゲージメント(投稿への反応)を持つ複数のアカウントが、ユーザーをミスリードしているとして非難されている。
非難されているアカウントは、ドナルド・トランプ米大統領を支持し、アメリカの政治について投稿していたが、実際にはアメリカ国外に拠点を置いていた。一方で、誤った位置情報を示していた「反トランプ」のアカウントもあった。
一部のアカウントの投稿は、数百万件のインプレッション(閲覧、いいね、再投稿、返信など)を集めており、これはXからの支払いにつながる可能性がある。
BBCヴェリファイ(検証チーム)は、Xが各アカウントについて提供する情報について独自に確認できていない。
データは「99%正確」だとX
位置情報は、すべてのプロフィールに表示される新しい「このアカウントについて」タブで確認できる。
このタブには、位置情報が最近の旅行、一時的な移動、仮想プライベートネットワーク(VPN)の使用によって影響を受ける可能性があるという警告も含まれている。
しかし、Xのプロダクト責任者であるニキータ・ビア氏によると、この情報は99%正確だという。
トランプ氏は22日、自身のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」で、Xの「TRUMP_ARMY_(トランプ氏の軍)」というアカウントの投稿のスクリーンショットを共有した。
この投稿は、米連邦最高裁判所が大統領が犯罪者を中米エルサルバドルに移送できるようにするという判決を出したと主張し、それを祝う内容となっている。
このアカウントは、共和党の有力上院議員を含む50万人以上のフォロワーを集めている。
しかしXのデータによると、このアカウントはインドに拠点を置いている。また、ユーザー名は2022年3月以降に4回変更され、最後の変更は2022年7月だった。
このアカウントのプロフィールは現在、「an Indian who loves America, President Trump, Musk!(アメリカ、トランプ大統領、マスク氏を愛するインド人!)」に変更されている。

別の「IvankaNews_」というアカウントは、トランプ氏の娘のファンアカウントと自己紹介している。100万人以上のフォロワーを集め、昨年、大統領への投票について投稿したことがある。
しかしXによると、このアカウントはアフリカのナイジェリアに拠点を置いており、ユーザー名は2010年以降11回変更されている。
位置情報が明らかになった後、このアカウントは「アメリカ国外に住んでいる私たちの中には、トランプ大統領の運動を本当に支持している者もいる」と投稿した。
現在、Xは「IvankaNews_」を停止したとみられるが、その理由は不明だ。

ケニアにいる「誇り高き民主党員」
BBCヴェリファイは、実際には米国外に拠点を置いているにもかかわらず、反トランプ氏の投稿を共有しているアカウントの事例も、Xの新機能によって確認した。
あるアカウントは、5万2000人のフォロワーを持ち、「誇り高き民主党員」かつ「プロのMAGAハンター」だと主張していた(MAGAはトランプ氏のスローガン「アメリカを再び偉大に」の頭文字)。
このユーザーは、ケニアに拠点を置いていることが明らかになった後、プロフィールを削除したとみられる。
アメリカ以外でも同様の事例
BBCヴェリファイはまた、英スコットランドからのものだと主張し、ほぼ独立支持の投稿のみを行っている複数のアカウントを確認した。
しかしXの位置情報によると、これらのアカウントはイランから、アンドロイドのアプリを使ってXにアクセスしているとみられる。位置情報タブにはオランダに拠点を置いていると表示されているが、Xは、これらのアカウントがVPNを使用している可能性を示す警告マークを表示している。
BBCヴェリファイはこれらのアカウントと接触を試みたが、これまで返信は来ていない。


「位置偽装で金もうけ」
これらのアカウントのほとんどは、青い認証バッジを保持している。これは、Xの有料機能に加入し、エンゲージメント率に応じて投稿から収益を得る可能性があることを意味する。
Xの収益化プログラムにアクセスするには、ユーザーは複数の条件を満たす必要がある。これには、身分証の確認や、3カ月以内に500万件以上のインプレッションを獲得することなどが含まれる。
米コーネル大学とイスラエル工科大学による大学院「コーネル・テック」のアレクシオス・マンザルリス氏は、青い認証バッジを持つアカウントが、プラットフォーム上の問題を悪化させていると指摘。「これらのアカウントの青い認証バッジが示しているのは、私たちがすでに知っていたことだ。それは、Xのペイ・フォー・プレイ方式のバッジは単なる収益源であり、真剣な認証の取り組みではないということだ」と述べた。
一方でマンザルリス氏は、広く拡散された投稿に文脈を追加できる「コミュニティノート」などの機能は、プラットフォームが透明性を重視していることを示していると付け加えた。
研究者らによると、アカウントが正確な位置情報を開示しない理由には、しばしば複雑な動機があるという。
偽情報の専門家である、米クレムソン大学メディア・フォレンジクス・ハブ所属のダレン・リンヴィル教授は、「トロール(インターネット上の荒らし)工場が運営するアカウント、国家が運営するアカウント、そしてただただ、アメリカ人を装って金もうけをしようとするアカウントがある」と述べた。
マンザルリス氏も、金銭がしばしば要因になることに同意している。
「ソーシャルメディアでアメリカの文化戦争をあおることで、常にいくらかの金を稼ぐことができる」
「とはいえ、組織化された国家主体や政党が、偽装アカウントを繰り返し利用してきたことは明らかになっているので、おそらく両方の要素があるだろう」
リンヴィル教授はしかし、Xのこの新機能があっても、一部のユーザーが抜け道を見つけると考えている。
「悪意のある者は非常に早く適応するだろう。(中略)VPNで回避できるし、アカウントを作成した場所が西側やアメリカに見えるよう、アカウントの作り方を変えるだろう」
追加取材:ベネディクト・ガーマン、シャリハン・アル=アクラス、ポール・マイヤーズ













