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生きる力とは?文科省の定義と三つの重要な資質、授業実践例を紹介

知る・調べる

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2025.10.27

谷山優子

谷山優子

神戸女子大学教育学部教授

202509_生きる力(デザイン:苗代澤真祐)

「生きる力」は文部科学省が掲げる理念でありながら、授業づくりや学級経営にどう生かすか迷う教員も少なくありません。この記事では、その定義や背景を整理し、実際の授業改善事例をもとに、教員が子どもたちに「生きる力」を育むための視点を解説します。

(監修:谷山優子

目次

  1. 「生きる力」とは知・徳・体のバランスのとれた力のこと
  2. なぜ「生きる力」の育成が必要なのか
  3. 「生きる力」を育むために学校教育はどう変わるのか
  4. 「生きる力」を育む授業改善の例
  5. 「生きる力」を意識した授業づくりが未来をひらく

1.「生きる力」とは知・徳・体のバランスのとれた力のこと

「生きる力」は、単なる学力の向上ではなく、豊かな人間性や健やかな体も含めた「知・徳・体」のバランスを重視している点が大きな特徴です。ここでは、文部科学省が定義する「生きる力」の基本的な考え方を整理し、学校教育においてどのような力を育成しようとしているのかを解説します。

(1)生きる力とは?

生きる力とは、「確かな学力」「豊かな人間性」「健康・体力」のバランスの取れた力のことをいいます。文部科学省では、これら三つの力を知・徳・体と表現し、変化の激しいこれからの社会をたくましく生き抜くために新しい学習指導要領で子どもたちの「生きる力」を育むことを一つの目的としています。

また、生きる力は社会において子どもたちに必要となる力をまず明確にし、そこから教育のあり方を改善するという考え方において、OECD(経済協力開発機構)のいう主要な資質・能力(キー・コンピテンシー)を先取りしたものです。

OECDのキー・コンピテンシーは、「異質な集団と交流する」「自律的に活動する」「相互作用的に道具を用いる」の三つです。これらは「知識」の獲得のみならず、「スキル」もつけていこうというもので、言語や数、情報を扱う「基礎的なリテラシー」や思考力、学び方に関わる「認知的スキル」、社会や他者との関係づくりに関わる「社会的スキル」も育てようというものです。このような考え方をベースにして、子どもたちに育成したい生きる力を捉えてきました。

なお、中央教育審議会(中教審)では、OECDのEducation 2030をもとに2030年代の学習指導要領の改定を進めており、2025年9月5日にこれまでの議論をまとめています。そこでは、予測困難な社会の中で学びを通じて自分の人生をかじ取りし、社会の中で多様な他者とともに生きる力を育むこと、AIなどのデジタル技術の進展に対応する情報活用能力の育成が必要だと整理されています。

こうした方針を持続可能なものとするために、具体的な検討を進めて2026年中に答申を取りまとめる予定となっているため、教員は今後の動向に注目しなければなりません(参照:資料1 教育課程企画特別部会 論点整理〈素案〉|文部科学省)。

(2)生きる力では学力の重要な三つの要素を育成

文部科学省は「生きる力」の基本的な考え方として、以下の三つの要素を重視しています(参照:学校・家庭・地域が力をあわせ、社会全体で、子どもたちの「生きる力」をはぐくむために p.9|文部科学省)。

    基礎的・基本的な知識・技能の習得
    思考力・判断力・表現力などの育成
    学習に取り組む意欲

これらをバランスよく伸ばすために、学習指導要領では授業時数を増やすなどして、教育内容を改善してきました。教員にとっては「知識を授ける」だけでなく、子どもが自分の学びを活用し、考え、仲間と協働して表現する機会を設けることが重要になります。

(3)生きる力はゆとり・詰め込みへの転換ではない

「生きる力」という理念は、しばしば「ゆとり教育」や「詰め込み教育」と関連づけられて語られます。しかし文部科学省は、学習指導要領改訂の際に「次代を担う子どもたちが、これからの社会において必要となる力を確実に身に付けられるようにする」ことを目的としており、家庭や地域・社会と連携して教育を進める重要性を示しています(参照:学校・家庭・地域が力をあわせ、社会全体で、子どもたちの「生きる力」をはぐくむために p.6|文部科学省)。

つまり、「生きる力」とは学力だけを強化することでも、反対に学習量を減らすことでもなく、 学校・家庭・地域が一体となって子どもを支える教育理念として捉える必要があるのです。

2.なぜ「生きる力」の育成が必要なのか

では、なぜ今「生きる力」の育成が強く求められているのでしょうか。その背景には、日本の子どもたちの学力状況の変化と、社会そのものの大きな転換があります。学力調査の結果から見えてきた課題に加え、知識が新たな価値を生み出す原動力となる「知識基盤社会」の到来が、学校教育に新しい役割を突きつけています。ここでは、その二つの観点から「生きる力」の必要性を整理していきます。

谷山優子

谷山優子

神戸女子大学教育学部教授。公立小中学校教諭、教育委員会、副校長を経て2012年4月から現職。特別支援教育士。学校心理士スーパーバイザー。兵庫県教員等の資質向上に関する協議会委員。特別支援教育、これからの社会を生きる力、教員の資質向上、生徒指導、授業づくり、学級づくり、学校経営を専門に研究を行う。

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