帳面を開くと主人公すずの描いた絵が現れ、思い出がよみがえり、その思いが歌になる――という趣向は良いと思います。舞台美術と場面転換も冴(さ)えてました。ただ回想形式にするのは分かるとしても、時系列までいじる狙いが分からず。時間が進んだり戻ったりするので物語が分かりにくくなりました。アンジェラ・アキさん作詞作曲の音楽は、いい歌がいくつもありましたが全体のトーンの統一感が弱く、そして原作通り「昭和」なんだけど違和感のある「明るい昭和」……。あっ「ドリフ大爆笑」か!

拡大する写真・図版ミュージカル「この世界の片隅に」プログラム

 東京・日比谷の日生劇場で5月9日に幕を開けた東宝製作のミュージカル「この世界の片隅に」を見てきました。全2幕で2時間余。見終えた気分は、いろいろまだら模様です。

 広島・江波でノリ養殖を営む家で育ったすずが、昭和19年2月、18歳で呉の北條家に嫁ぎ、夫周作との新しい生活を始めるが、戦況は悪化していき空襲は激化、「新型爆弾」が故郷の家族を襲う……。原作はこうの史代さんのマンガ。物資の乏しい中で日々の暮らしにささやかな幸せを見いだそうとする姿、周作や義理のめい晴美への愛、遊郭で働くリンとの友情、じわじわと日常を侵食し破壊する戦争のリアルな恐怖、といったものが盛り込まれた物語はアニメ映画となり実写ドラマとなり、このたびミュージカルに。

 舞台装置は、大きな帳面が横に…

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