ベンチ脇で見た選抜準V 報徳学園の岡田が阪神・今朝丸から得たもの
(24日、第107回全国高校野球選手権兵庫大会準々決勝 報徳学園11―4神戸国際大付)
報徳学園の大角健二監督が目を見張った瞬間があった。
7点リードの八回裏。抑えればコールド勝ちが決まる。先発の岡田壮真(3年)は先頭打者の頭部付近にボールをぶつけてしまった。
「すぐ次のピッチャーの準備を考えていた」と大角監督。
うずくまっていた打者は幸い自身で歩いてベンチに下がれたものの、マウンドの岡田が動揺で崩れるのでは、と心配だった。
だが、左腕はひるまなかった。代打の次打者に力強い速球を投げ込み続け、空振り三振を奪った。後続に安打を許さず試合を締めた。「逆にギアが上がっていて、これはメンタルが強くなったなと」と大角監督は口角を上げた。
岡田は「いい打線に外角だけでは抑えられない。初回から内で攻めていけた」。六回に5連打を浴びた直後も、代打が送られる間に気持ちを整理していた。
「これ以上は取り返しがつかないことになる、とギアを3、4段上げた」。三者連続で打ち取り、相手の勢いを断ち切った。
報徳学園は昨春、後にドラフト2位で阪神タイガースに入団する今朝丸裕喜と、国学院大に進学した間木歩の右腕二枚看板を擁し、選抜大会で準優勝した。
まだベンチ入りできていなかった岡田は、健大高崎(群馬)との決勝で、ボールパーソンを務めた。「何かを得てほしい」と、大角監督からの指名だった。
試合は投手戦となり、最後は2―3で敗れた。健大高崎は八回までを石垣元気が投げ、九回にリリーフした左腕の佐藤龍月が歓喜の輪の中心にいた。2人とも、岡田と同じ当時2年生だった。
間近で見た岡田は「見ていて悔しさがわいた。自分がこのリベンジをすると思っていた」。
1学年上の先輩から、学ぶこともたくさんあった。今朝丸からは「初回から内を攻める投球」を、間木からは「絶対に打たれへんと上げるギア」を見て学び、自分のものにしてきた。
昨秋は県大会で初戦負けを喫し、「自分が、ピッチャー陣が、やらないといけない」と夏を見据えてきた。
今春の県大会決勝は、東洋大姫路を相手に登板機会がないまま敗れた。「お互いに決勝まで行って、その試合では僕が投げて甲子園に行きたい」
マウンドを降りても、言葉の節々に強気がにじんだ。(平田瑛美)