[go: up one dir, main page]

 オリンピックは、スポーツゲームの世界でも重要なコンテンツとして捉えられ、様々なゲームが私たちを楽しませてくれました。

 記憶に残るゲームとして、多くの人が挙げるのが「ハイパーオリンピック」(コナミ、1985年)。「とにかくボタンを連打して速く走るといった単純明快なおもしろさは、まさにスポーツの原点」(ゲーム情報誌「週刊ファミ通」の林克彦・編集長)というソフトそのものの魅力に加え、コインや定規といった小道具を使って記録を上げるという、ゲームの新しい楽しみ方のヒントをくれたソフトでもありました。

 「五輪とゲーム」の歴史を振り返る今回の企画。懐かしい思い出から、ゲーム好きが驚いたオリンピックならではの人気キャラクターの競演まで、年表とともにお楽しみください。

1983年

  • 任天堂がファミリーコンピュータ(FC)を発売。8ビットCPUを搭載、家庭用ゲーム機の本格普及が始まる
  • 千葉県浦安市に東京ディズニーランドが開園

1984年

  • 米アップルが初代「マッキントッシュ」発売。スティーブ・ジョブズによる独創的なパソコンは熱狂的なファンを獲得する一方、OSのシェア争いでは米マイクロソフトの後塵を拝し続けることになる
  • 任天堂がFCの周辺機器「ファミリーベーシック」発売。キーボードを備え、独自のBASIC言語で簡単なゲームプログラミングができる

1985年

  • 任天堂がFCソフト「スーパーマリオブラザーズ」発売。攻略本が年間ベストセラーになる社会現象に

ハイパーオリンピック (コナミデジタルエンタテインメント・FC)

アーケードで人気を博したスポーツゲームの移植版。家庭用廉価PCの先駆け「MSX」でも発売された。ボタン連打で記録を競う

【動画】それは「ハイパーオリンピック」から始まった…… 「週刊ファミ通」に聞くオリンピックとゲーム・1

ハイパーオリンピック
限定版

プレイヤーキャラクターを殿様に変更した限定版も発売された

ハイパーショット

専用コントローラー「ハイパーショット」を爪や定規でこするプレーが定着。友だちを家に呼ぶたびにボタンの傷が増えていった

ハイパースポーツ (コナミデジタルエンタテインメント・FC)

アーケード版移植に際してタイトル変更され、「オリンピック」の名前が外れた

ハイパースポーツ

1986年

  • エニックス(現スクウェア・エニックス)がFCソフト「ドラゴンクエスト」発売。日本版RPGの先駆けであり代表的タイトル
  • 「ファミコン通信」創刊(現「週刊ファミ通」)。荒井清和さんの漫画「べーしっ君」が創刊号の表紙だった
「ファミコン通信」(現「週刊ファミ通」)

「ファミコン通信」(現「週刊ファミ通」)

  • ハドソン(現コナミデジタルエンタテインメント)がFC向けシューティングゲーム「スターソルジャー」発売。秒間16連射を武器に超絶プレーを披露する高橋名人を宣伝塔に、全国縦断イベントや映画公開につなげた。高橋名人はタレント的に人気が爆発し、歌手デビューまで果たす。なぜか時折、死亡説や逮捕説がちびっ子たちの間を駆け巡った
ハドソン社員と模型機関車に乗って楽しむ高橋名人(手前)=1987年6月28日

ハドソン社員と模型機関車に乗って楽しむ高橋名人(手前)=1987年6月28日

1987年

  • NECが新ハードのPCエンジン(PCE)発売。PC-98/88シリーズで成功を収めた家庭用PC市場に次いで、家庭用ゲーム機市場にもハドソンと組んで参入を果たす。8ビット機ながら多色グラフィックによるアーケード移植の再現度の高さを実現。他社に先駆けて大容量のCD-ROMを投入した

1988年

コナミックスポーツインソウル (コナミデジタルエンタテインメント・FC)

コナミの陸上競技ゲームには当時、「コナミックスポーツ」の名前が付いた。ソウル五輪に合わせて発売

コナミックスポーツインソウル

1990年

  • 任天堂がFC後継機のスーパーファミコン(SFC)を発売。16ビット化でよりグラフィカルな演出が可能になった
1990年に発売された任天堂のスーパーファミコン

1990年に発売された任天堂のスーパーファミコン

1992年

CAPCOMバルセロナ'92 ©CAPCOM., LTD. ALL RIGHTS RESERVED. (カプコン・FC)

ご多分に漏れない連打ゲーム。ハイパーオリンピックにはない水泳競技がウリだった

【動画】カプコン「らしさ」が表れたゲームのつくりとは 「週刊ファミ通」に聞くオリンピックとゲーム・2

CAPCOMバルセロナ'92

※1

コナミックスポーツ イン バルセロナ (コナミデジタルエンタテインメント・GB)

画面と本体、コントローラーが一体のポータブルゲーム機でボタンを連打するという、違う意味で難易度の高いゲーム

コナミックスポーツ イン バルセロナ

びっくり熱血新記録 はるかなる金メダル (テクノスジャパン・FC)

リーゼント頭がトレードマークのヤンキーヒーロー「熱血硬派くにおくん」シリーズのスポーツゲーム。「金メダル」で五輪を連想させた。ドッジボール編が特に有名。同シリーズはパチンコ台でも人気となった

びっくり熱血新記録! はるかなる金メダル

1994年

  • ソニー「プレイステーション」(PS)とセガ「セガサターン」(SS)の両ハードが発売。ポリゴン処理に耐える高性能な32ビット機。ソフトも大容量のCD-ROMとなった
  • セガのアーケードゲーム「バーチャファイター2」稼働開始。行きずりのゲーマー同士が対戦台で乱入しあってしのぎを削る、新たなゲームセンター文化が始まる。「池袋サラ」「新宿ジャッキー」など、根城の地名を冠したスターを生んだ。乱入3D対戦格闘ゲームの金字塔
プレイステーション

1994年に発売されたプレイステーション

1995年

  • 米マイクロソフトがPC用OS「ウィンドウズ95」をリリース。本格的なインターネット時代が到来。ネットの普及に伴ってオンラインゲームが人気に
  • 写真シール撮影機「プリント倶楽部」(セガ/アトラス)がブームに。不良のたまり場のイメージが強かったゲームセンターに女子高生が集まりだした
95年7月に発売された「プリント倶楽部」の1号機(アトラス提供)

95年7月に発売された「プリント倶楽部」の1号機(アトラス提供)

1996年

ハイパーオリンピック イン アトランタ (コナミデジタルエンタテインメント・PS)

高速処理を得意とする32ビット機ならではの、ポリゴンを駆使したゲーム。操作方法の基本は8ビット時代から変わらない

ハイパーオリンピック イン アトランタ

デカスリート (セガゲームス・SS/PS2)

当時のセガサターン移植前提のアーケードゲーム基板で制作・稼働。陸上10種競技が楽しめる連打ゲーム

デカスリート

炎の15種目 アトランタオリンピック (ココナッツジャパンエンターテイメント・PS)

発売したソフトハウスは、「舛添要一 朝までファミコン」といった珍タイトルも送り出した

1999年

  • NTTドコモが携帯電話向けインターネット接続サービス「iモード」開始。携帯によるメール交換やウェブサイト閲覧が可能になり、着メロのダウンロードや写メール交換がブームに。まだ定額料金プランが普及してなかったため、高額なパケット通信料請求に苦しみ「パケ死」する利用者も多かった
デジタル・ムーバ「P501 HYPER」

松下電器産業(現パナソニック)による初のiモード対応端末、デジタル・ムーバ「P501 HYPER」。この頃のPシリーズは中央のジョグダイヤルが特徴。「ムーバ」というシリーズ名称も懐かしい※2

2000年

がんばれ!ニッポン!オリンピック2000 (コナミデジタルエンタテインメント・PS/DC/PS2/N64/GBC)

シドニー五輪のタイミングでリリースされたもの。「がんばれ!ニッポン!」というこれまでにないタイトルが付いた

がんばれ!ニッポン!オリンピック2000

バーチャアスリート2K (セガゲームス・DC)

「バーチャファイター」「バーチャコップ」といった当時のセガの看板タイトルの系譜。「デカスリート」の発展版と言えそう

バーチャアスリート2K

※3

シドニー2000 (カプコン・PS/DC)

この頃には、公式ライセンスを得たゲームのみが五輪開催地をタイトルに盛り込める傾向に

2003年

  • テレビの地上デジタル放送開始。2012年にアナログ停波する。前後して家庭用テレビは薄型液晶に置き換わっていった
  • フジテレビ系CS番組「ゲームセンターCX」放送開始。お笑い芸人の有野晋哉さん(よゐこ)がレトロゲームに挑戦する企画が根強い人気。理不尽な難易度が新鮮に映ったか、中古ソフト市場も活況に
「ゲームセンターCX」作業着姿の有野(晋哉)課長。2014年2月3日、野波健祐撮影

「ゲームセンターCX」作業着姿の有野(晋哉)課長。2014年2月3日、野波健祐撮影

2004年

ATHENS 2004 (ソニー・インタラクティブエンタテインメント・PS2)

五輪ロゴがパッケージに印刷された公式ゲーム。ゲーム名にはあえて「オリンピック」と入っていない

ATHENS 2004

2007年

  • 米アップルが北米で初代iPhoneを発売。スマートフォンの元祖。ゲーム機の主役の座は、専用機から徐々にスマホにシフトしていく
  • ネット動画共有サービス「ニコニコ動画」が本サービス開始。自らのゲームプレー映像を実況を交えて投稿するユーザーが増え、同サービスの一大ジャンルに成長していく
ニコニコ生放送での「ロックマン2」実況の様子

ニコニコ生放送での「ロックマン2」実況の様子※1

2008年

マリオ&ソニック AT 北京オリンピック (任天堂・Wii/DS)

オリンピックという舞台をきっかけに、マリオとソニックという2大キャラクターのコラボが実現。Wii版とDS版合わせて全世界で1000万本以上が売れるヒット作に。世界的人気のマリオとソニックが、スポーツゲーム開発にたけたセガのフィールドで暴れ回る

【動画】ゲーム好きが驚いた2大キャラクターのコラボ 「週刊ファミ通」に聞くオリンピックとゲーム・3

マリオ&ソニック AT 北京オリンピック

※4

北京オリンピック 2008 (セガゲームス・PS3/Xbox 360)

海外制作版をセガが発売。「マリオ&ソニック」とはうってかわってのリアル路線。CGが精巧なゆえに選手たちの表情がちょっと怖い

北京オリンピック 2008

※5

2010年

  • 米アップルがタブレット型コンピューター「iPad」発売。家庭でのネット閲覧デバイスがPCからモバイル端末に移っていく
iPad

米アップルのiPad

2011年

  • 東日本大震災が発生。災害時の情報インフラとしてツイッターなどのSNSが注目される

マリオ&ソニック AT ロンドンオリンピック (任天堂・Wii/3DS)

「マリオ&ソニック」シリーズのロンドン版。Wii版ではすべての競技で4人プレーに対応した。ロンドンの街を舞台にしたパーティーゲームも収録

【動画】プロモーション映像=任天堂提供※6

マリオ&ソニック AT ロンドンオリンピック

※6

2012年

  • ガンホー・オンライン・エンターテイメントが、スマホ向けパズルRPG「パズル&ドラゴンズ」配信開始。無料で遊べるが、有利にゲームを進めるアイテムに課金される仕組み。大ヒットによってスマホゲームの代名詞となった

2013年

  • 角川ゲームスとDMMがPC向け育成シミュレーションゲーム「艦隊これくしょん」(艦これ)配信開始。軍艦を美少女に擬人化するという離れ業で新たなゲームファンを獲得する
「艦隊これくしょん―艦これ―」母港画面

「艦隊これくしょん―艦これ―」母港画面※7

  • 動画投稿サイト「ユーチューブ」にオリジナル動画を投稿して稼ぐ「ユーチューバー」が目立ち始める。ゲーム実況をウリにする配信者も多い
ユーチューバー・HIKAKINさん=嶋田達也撮影

ユーチューバー・HIKAKINさん=嶋田達也撮影

2014年

  • 出版社のKADOKAWAとIT企業のドワンゴが経営統合。コンテンツの版元と二次創作プラットフォームの合体は、関連市場に大きな衝撃を与えた

2015年

  • 外国人観光客増を見込むカジノ施設解禁を巡る議論が超党派で活発化するが、ギャンブル依存症やマネーロンダリングへの懸念から法案提出は断念。実現を模索する動きが続く

2016年

  • 米マイクロソフトが新型「Xbox One S」、ソニーが「プレイステーションVR」を年内に発売予定。バーチャルリアリティー表現の強化が据え置き型ゲーム機のトレンドに

マリオ&ソニック AT リオオリンピック (任天堂・Wii U/3DS)

実際のオリンピックで採用された7人制ラグビーを早速採用。セガ・インタラクティブからゲームセンターで遊ぶアーケード版も初めて登場した

【動画】プロモーション映像=任天堂提供※8

マリオ&ソニック AT リオオリンピック

※8

マリオ&ソニック AT リオオリンピック アーケードゲーム

マリオ&ソニック AT リオオリンピック アーケードゲーム(セガ・インタラクティブ)※9

  • 位置情報を利用してリアルなフィールドでポケモンを捕まえられるスマホ向けゲーム「Pokémon GO」(ポケモン ゴー)が配信開始。スマホの画面を見ながら街をさまよう人が世界中で続出する爆発的人気に。立ち入り禁止場所に迷い込んだり、政府機関が注意を呼びかけたりといった騒動も
配信が開始された「Pokémon GO」(ポケモン ゴー)。JR大阪駅前にもピカチュウが現れた=2016年7月22日、大阪市北区

配信が開始された「Pokémon GO」(ポケモン ゴー)。JR大阪駅前にもピカチュウが現れた=2016年7月22日、大阪市北区

20XX年

VRヘッドセット

プレイステーションVRを楽しむ人=SIE提供

 「ドット絵」と呼ばれる粗い画像でハードウエアの性能の限界に挑戦した初期の頃から、実写と見間違えるほど精密なコンピューターグラフィックスを駆使した現代まで、オリンピックを中心としたスポーツゲームは大きな進化を遂げました。

VRヘッドセット

プレイステーションVRを楽しむ人=SIE提供

 今、注目を集めているのがバーチャル・リアリティ(VR)技術。ゲームの中にいるような感覚は、これまでのゲームの概念を根本から変えてしまうのではないかと期待されています。

 次回、2020年のオリンピックの開催地は東京。日本が世界の最先端を走り続けるゲーム業界は、さらなる進化に向けて各社が次世代技術の開発を急いでいます。次はどんなドキドキで私たちを楽しませてくれるのでしょうか。