訓読 >>> この里は継(つ)ぎて霜(しも)や置く夏の野に我(わ)が見し草はもみちたりけり 要旨 >>> この里は止むことなく霜が降りるのだろうか。夏の野に私が見たこの草は、もう色づいている。 鑑賞 >>> 天平勝宝4年(752年)、孝謙天皇が、母の光明皇太后とともに大納言藤原家に行幸なさった時に、色づいた沢蘭(さわあららぎ:キク科のサワヒヨドリの古名)を一株抜き取って、内侍(女官の称)の佐々貴山君(ささきやまのきみ:伝未詳)に持たせて、藤原仲麻呂(ふじわらのなかまろ)と陪従の大夫らにお贈りになった歌。藤原仲麻呂は光明皇太后の甥にあたり、仲麻呂の邸である田村第(たむらのだい)は平城京左京四条二…